【10月12日 AFP】フランスを訪れる外国人が頭をかしげることの一つが、法律で小売業などの日曜営業が禁じられているため、日曜日に買い物ができないことだ。この法律に今、当のフランス国民も疑問を投げ掛け始めている。

 フランスの法律では、企業は従業員に午後9時から翌朝午前6時まで勤務するよう依頼することはできるが、厳しい条件を満たす必要があり、あくまで例外的な場合に限られる。小売業者は観光地や人口密集地に立地していれば日曜日も営業することはできるが、厳しい条件がある。日曜日に精肉店などの食料品店は午後1時までしか営業できない。

■労働者側が日曜出勤を望む時代

 フランスでここ数週間、飲食店以外の店舗に深夜と日曜の営業を原則禁じる現行法を支持する判決が相次いだことから、この問題が議論を呼んでいる。日曜にも働きたいという労働者たち、経済的に困難な状況にある今、現行法は古臭く時代に合っていないと怒っている。

 緊縮財政と経済成長の両立を約束したフランス社会党政権は、これまでのところ、日曜を休日とする現行法を支持している一方、国営郵便局の元トップを登用して現行法の問題点を調べさせ、11月末までに提言を出すよう求めている。

 中道右派の野党・国民運動連合(UMP)のパリ(Paris)市長候補、ナタリー・コシウスコモリゼ(Nathalie Kosciusko-Morizet)氏は、現行法は世界で最も多くの人が訪れる都市パリに大きな損失をもたらしていると批判した。

 同氏はフリーペーパー「メトロニュース(Metro News)」のインタビューで「被雇用者は働きがっているし、さまざまな商売が1週間の売り上げの20%を稼ぐのが日曜だ。旅行会社がツアー客に買い物をさせるため日曜に(パリから)ロンドン(London)に移動させる日程を組んでいることを考えても、観光客が買い物をできた方がいい」と述べた。

日曜に買い物をするというパリ在住のエリザベス・アルマーニ(Elisabeth Armani)さんは「人に働く権利を与えないなんて、国として恥ずかしい。失業問題もあるのに」と語った。

「同情的な」地元自治体から日曜営業の特別許可を受けた店もあるが、実際に日曜営業を始めたのはいくつかのホームセンターだけだ。先月には大手ホームセンターチェーン、カストラマ(Castorama)とルロワ・メルラン(Leroy Merlin)がパリ地区の数店舗を日曜は閉店するよう裁判所から命じられた。違反すれば1店舗につき1日12万ユーロ(約1600万円)の罰金を科されるにもかかわらず、両社とも日曜営業を続ける方針だ。10月2~3日に行われた世論調査では回答した933人のうち66%が両社の方針を支持すると回答した。

■政治的立場を超えて日曜解禁に反対の声も

 中国から米国まで、日曜営業や24時間営業は多くの国でかなり一般的だ。欧州諸国でもスペインやポルトガル、イタリアではユーロ圏金融危機の余波で規制を緩和した。

 しかしフランスでは毎週日曜、または日曜に時々働く人は労働者の約30%だ。法律では、日曜労働は労働者本人の意思によるものでなければならず、また日曜に働いた場合の賃金は通常の50%増しにすることが定められている。

 近代フランス文化における日曜の位置付けに関する歴史書の著作があるロベール・ベック(Robert Beck)氏によれば、カトリック色の濃いフランスのこの法律の由来は、1898~1906年に各地の大都市で続いた大規模な労働者デモにある。この時期のデモの結果できた法律が、日曜を義務休業日と定めた。当時も「教会と労働組合は反対し、企業家は賛成していた」という。

 フランスの多くの家庭は今でも、日曜日に家族そろって昼食を取ることをとても大切にしている。「カトリック・エコノミスト協会(AEC)」のジャンイブ・ノーデ(Jean-Yves Naudet)会長は、規制を緩和すれば仕事が増える方向にはなるだろうが、経済成長における日曜の買い物の効果を定量化するのは難しいと述べ、個人的な考えだとした上で、子どもやバランスの取れた家族生活の方が重要で、日曜営業解禁には反対だと語った。

 ノーデ氏と同じように日曜営業解禁に反対する政治家たちもいる。中道政党・民主運動(MoDem)のフランソワ・バイル(Francois Bayrou)議長は「商売が最優先にされない日が週に1度は必要だというのは、進んだ文明の考え方でもある」と言う。

 政党連合・左翼党のリーダー、ジャンリュック・メランション (Jean-Luc Melenchon)氏も「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」と述べている。(c)AFP/Samir Tounsi