【10月12日 AFP】中米のニカラグアは、絶滅の危機に直面しているバクを救うために最大限の努力を続けている。

 ニカラグアの専門家らは、バクの妊娠期間が長いこと、密猟、森林伐採による生息地の喪失などが個体数の減少につながっていると指摘する。

 ニカラグアの国立動物園でバク・プロジェクトを担当している獣医のエドゥアルド・サカサ(Eduardo Sacasa)氏は「バクの妊娠期間は400日と非常に長いため絶滅寸前になっている。バクは今ニカラグアのみならず世界で最も絶滅の危機にさらされている動物だ」とAFPに語った。

 中南米と東南アジアの森林に生息するバクは、その個性的な外見からアリクイや小型のカバと間違われることもある。肉厚で物に巻き付けることができる長い鼻は、葉をつかんだり水中で呼吸したりするのに役立っている。

 妊娠期間が長いことに加えて、通常は1回の出産で1頭しか子を産まない。ウマやサイに似たひづめを持っており、成長すると最大で300キロの大きさになる場合もあり、寿命は最長で18年程度。植物の種をまき散らす上で大きな役割を果たしているため、「森の庭師」の異名で呼ばれている。

 サカサ氏は、間もなく自然に返されて追跡調査の対象になる予定の動物園育ちのバクのつがい、2歳のマヤ(Maya)とカルブリート(Carburito)を見つめながら「彼らの行動範囲がどのくらい広いかや、どのようにして環境に適応するかを調査する予定だ──生き延びてくれれば。そうならないかもしれないが」と話す。

 マヤとカルブリートは1~2か月以内に、ニカラグアのカリブ海沿岸にある広さ650ヘクタールのカーカクリーク(Kahka Creek)自然保護区に軍用ヘリで運ばれる予定だ。

 この人里離れた地域では、ニカラグアのバクを救おうという国立動物園の試みに「多くの小規模農家が進んで協力を申し出ている」とサカサ氏は言う。ニカラグア国内には数年前には2000頭のバクがいたとみられているが、現在では約500頭にまで減少したとみられている。

■食用にするため狩猟の対象に

 世界には4種のバクが生息しており、いずれも絶滅が危ぶまれている。ニカラグアのプロジェクトは、米ミシガン州立大学(Michigan State University)の専門家、クリストファー・ジョーダン(Christopher Jordan)氏や環境省、地元のNGOの支援も受けてきた。

 サカサ氏によると、カーカクリーク自然保護区内には、バクやその他の動物の生態調査のため65台のカメラが設置されている。

 国立動物園は自然保護区を囲むフェンスの建設を急ピッチで進めており、マヤとカルブリートを自然に返すのはその完成後になる見込みだ。必要となる1万ドル(約100万円)程度の寄付をソーシャルメディアのキャンペーンを通じて集めることを同動物園は望んでいる。

 バク保護プロジェクトを支援している環境保護団体Amarteのエンリケ・リムバウド(Enrique Rimbaud)氏によると、ニカラグア、ホンジュラス、コスタリカでバクが絶滅の危機に直面しているのは、食用にするため狩猟の対象になっているからだという。

 自然保護区が位置する地域の自治体は、食用のバクを年間4頭まで狩ることを先住民に認めており、これもバクの個体数減少の要因の1つになっているとリムバウド氏は述べている。(c)AFP/Blanca MOREL