【10月12日 AFP】第2次世界大戦（World War II）中のイタリアで起きた虐殺に関与したとして終身刑判決を受け、約15年前から軟禁されていたナチス（Nazi）戦犯エーリヒ・プリーブケ（Erich Priebke）受刑者が11日、イタリア・ローマ（Rome）で死去した。100歳だった。
 
 ナチス親衛隊（SS）の将校だったプリーブケ被告は1944年3月にユダヤ人75人を含む335人が殺害されたローマのアルディアティーネ洞窟（Ardeatine Caves）の大量殺りくに関与した罪で、1998年に終身刑の判決を受けた。

 プリーブケ受刑者は高齢と体調不良のため、弁護士のパオロ・ジャキーニ（Paolo Giachini）氏宅で終身刑の刑期を務めることが許可された。ジャキーニ氏によると、プリーブケ受刑者は戦後逃亡していたアルゼンチンで妻の墓の近くに埋葬される。

「アルディアティーネ洞窟の虐殺者」と呼ばれたプリーブケ受刑者は、あくまでも命令に従っただけだとの主張を崩さなかった。1996年ローマでの最初の裁判で「命令はベルリン（Berlin）にいた（アドルフ・）ヒトラー（Adolf Hitler）から直接きた」「拒否した者は誰であれ、ナチス親衛隊によって裁かれていた」と主張した。

 1998年の上訴審ではナチス親衛隊を襲撃したレジスタンスへの報復殺りくは「恐ろしい、個人的な悲劇」で「私の手で避けることができたのならそうしていた」と述べた。また「公に後悔して見せることによって自分の尊厳を損なうことはしない」として、最後まで自責の念を示さなかった。

 もともとホテル経営者だったプリーブケ受刑者は終戦時にアルゼンチンに逃亡。実名でホテルを経営し、同地のドイツ人社会で尊敬を集めていた。ドイツのパスポートを得て、イタリア、ドイツ、米国を旅行、1995年にイタリアに引き渡されるまで40年以上アルゼンチンで暮らした。その間毎年4月20日には古い同志たちとヒトラーの誕生日を祝っていた。

 プリーブケ受刑者死亡の報を受けてイタリアのユダヤ人社会では怒りの声がわき起こった。その指導者リカルド・パチフィチ（Riccardo Pacifici）氏は、「彼は若い時の罪を認めることは決してなかった…犠牲者にもその家族にも同情することは全くなかった」と述べ、プリーブケ受刑者は来世でその行為を償うだろうと語った。(c)AFP/Laure BRUMONT