ノーベル賞でカナダ文学に「ようやく国際的評価」
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【10月12日 AFP】2013年のノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)を受賞した小説家アリス・マンロー(Alice Munro)氏(82)の出身国カナダの多くの作家たちは、世界の文学に多大な貢献をしてきたにもかかわらず、長きにわたって過小評価されていると感じ続けてきた。
マンロー氏は、ノーベル文学賞を受賞した初のカナダ人と言って良いだろう。1976年に同賞を受賞したソール・ベロー(Saul Bellow)氏はモントリオール(Montreal)生まれだが、9歳で米シカゴ(Chicago)に移住しているため米国の作家と位置づけられているためだ。
10日の受賞発表に際して、マンロー氏はいかにも同氏らしく謙虚に、この賞は自分のみならず、カナダの作家全員を元気にするものだと述べた。「多くのカナダの人たちを喜ばせるだろうことが特に嬉しい。この受賞によってカナダの文学作品に注目が集まるだろう」
カナダのある議員はマイクロブログのツイッター(Twitter)に「アリス・マンロー氏のノーベル賞受賞によって、カナダの作家たちは世界から正当に評価されるだろう。(本来なら)ずっと前からそうあるべきだった」と投稿した。
カナダの著名作家には、マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)氏、マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje)氏、そして小説家のキャロル・シールズ(Carol Shields)氏などが挙げられる。シールズ氏は、ピュリツァー賞(Pulitzer Prize)の受賞者でもある。また同国は英仏2言語を公用語としているが、フランス語作家には、マリクレール・ブレーズ(Marie-Claire Blais)氏やアン・エベール(Anne Hebert)氏、ガブリエル・ロワ(Gabrielle Roy)氏、ミシェル・トランブレー(Michel Tremblay)などが名を連ねる。
■ノーベル賞は象徴的な存在
カナダの芸術家育成および芸術の普及を目的とする団体「カナダ芸術評議会(Canada Council for the Arts)」のロバート・シャーマン(Robert Sherman)会長も、マンロー氏の受賞をこの上なく喜んでいる。
同氏は「文学の領域でカナダは長きにわたって、自分よりも上の階級での試合を強いられてきたような感覚があり、このことは国際的にもそう認識されていると思う」と指摘した上で、しかし「ノーベル賞は象徴的な存在であり、その競争は国際レベルで極めて高いものとなっている。この特別な栄誉を誇れる他の国々と、カナダが肩を並べていることを改めて確認できる出来事だ」と喜びをあらわにした。
■謙虚さ
ノーベル文学賞の受賞を大いに喜んでいるカナダの人々だが、彼らは口を揃えて、マンロー氏の人柄だけではなく、その作風や題材が静かで控えめで、まさにカナダ的なのだという。
シャーマン氏は、マンロー氏の作品が根ざしているのは「カナダ」であり、ケベックでも、国内の他のどの場所でも起こり得る物語だと述べる。
「舞台となる小さな町の描写には、どこか共通するものがある。それを説明するには『慎ましさ』という言葉がしっくりくると思う。短編小説という媒体を選択し、その中の小さな町の現実に自分の立ち位置を定めるという点に、とびきりの慎ましさを覚える。これが彼女の洞察の力をもたらしているに違いない」とシャーマン氏は評している。(c)AFP/Stephanie GRIFFITH