【10月9日 AFP】2014年ソチ冬季五輪の聖火がリレーの最中に4回にわたって消えた件で、8日、ロシアの関係当局者が説明に駆り出される事態になっている。

 ソチ五輪の聖火リレーで使用されているトーチは国内のミサイルメーカーが製作したもので、メディアの報道と目撃者によれば、リレー初日の7日に2回、翌8日にも2回消えたとされている。

 国有通信社のロシア通信(RIA-Novosti)によると、リレー参加者の一人で、フィンスイミングの世界記録保持者シャバルシュ・カラペトヤン(Shavarsh Karapetyan)氏は7日、自身が持つ火が消えたことでリレーを2度走る機会を得た。火はシークレットサービスが再点火したという。

 ロシアのモスクワ(Moscow)で活動する写真家のユーリー・フェクリストフ(Yury Feklistov)氏は、「火は2度消えた。スタッフがトーチを交換しなければならなかった」と記し、そのうち片方の場面の写真を自身のフェイスブック(Facebook)に投稿した。

 ロシアのビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko) スポーツ観光青年相は、タス通信 (TASS)から問題についてのコメントを求められ、「この件に関してはわれわれの中に責任者がいる。専門家が問題を解決するはずだ」と答えた。

 その一方で、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が結成した社会運動組織「全ロシア人民戦線(All-Russia People's Front)」は、調査員を入れて事態の把握にあたらせ、トーチに使われた総額2億700万ルーブル(約6億2000万円)の予算は無駄ではなかったのか、検証するよう促した。

 同団体の一員で、政府の代理人としてコメントを発表したミハイル・スタルシノフ(Mikhail Starshinov)氏は、「普通の人ならこうした疑問を持つだろう。なぜ1万6000本ものトーチを作ったのか? 1本あたりの費用はいくらなのか? 値段は適正なのか? そして、なぜしっかりと動作しないのか?」と述べた。

 トーチの製作を担当した、シベリア(Siberia)の都市クラスノヤルスク(Krasnoyarsk)に拠点を置く企業「KRASMASH」は、スポークスマンを通じて、1万6000本のトーチを作ったことを認めた。

 スポークスマンはAFPに対し「(ソチ五輪)組織委員会との契約上、トーチに関する情報を提供する権利はこちらにはありませんが、われわれが作ったことだけは事実です」とコメントしている。

 同社は、ロシア海軍の潜水艦に搭載される弾道ミサイルのメーカーとして知られており、またロシアが宇宙計画で使用するプロトンM(Proton-M)ロケットの部品も提供している。

 トーチの製作の契約は入札をへてなされたわけではなく、なぜ同社が選ばれたかは明らかになっていない。

 リレーで使用するトーチの何本かは、すでにロシアの複数のウェブサイトで販売が行われている。

 リレーが通過する予定となっているシベリアの都市チタ(Chita)でも、1人の人物がイーベイ(eBay)のロシア版サイト「Molotok.Ru」でトーチを販売している。入札者は1人のみで、希望価格は4万ルーブル(約12万円)となっている。

 トーチは長さ約1メートルのアルミ製で、重さは1.8キログラムあり、重量に対してはすでに不満が出ている。

 ソチ五輪組織委員会のウェブサイトではトーチが「強風やひどい霜など、冬のロシアで起こりうる突発的な厳しい環境でも、確実に安定して火がつく構造になっています」と紹介されている。(c)AFP