【10月6日 AFP】米軍は5日、リビアとソマリアで過激派の幹部を狙った軍事作戦を実施した。リビアでは1998年の米大使館爆破事件に関与したとして米国で起訴されていた国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)幹部のアブアナス・リビ(Abu Anas al-Libi)ことナジ・アブドゥルハメド・ルカイ(Nazih Abdul Hamed Al-Raghie)被告(49)を拘束した。

 米下院情報特別委員会(Permanent Select Committee on Intelligence)の委員を務めるアダム・シフ(Adam Schiff)議員(民主党)はツイッター(Twitter)に、「アブアナス・リビの拘束は残存するアルカイダの中核に大きな打撃を与えるものだ」と書き込んだ。

■リビア:15年前の米大使館爆破事件の被告を拘束

 米軍はリビアの首都トリポリ(Tripoli)で、1998年8月7日にケニアのナイロビ(Nairobi)とタンザニアのダルエスサラーム(Dar es Salaamで発生し、合わせて200人以上の死者を出した米大使館爆破事件に関与したとされ、被告不在のまま米ニューヨーク(New York)連邦地裁に起訴されたルカイ被告を拘束。同被告は、近く米国に移送されて裁判にかけられる見通しだ。

 ルカイ被告に近い筋によると、同被告はトリポリで武装した男たちに誘拐されたという。ある米当局者はCNNに、ルカイ被告拘束作戦はリビア政府に事前に通知した上で白昼に実施したと語ったが、リビア治安当局はルカイ被告の誘拐や逮捕について知らなかったとしている。

■ソマリア:アルシャバーブ幹部の拘束に失敗 

  一方、米海軍特殊部隊「シールズ(SEALs)」は同日未明、ソマリア南部ブラバ(Barawe)にあるイスラム過激派組織アルシャバーブ(Shebab)の「重要人物」(ある米当局者)の自宅を急襲したが拘束には失敗し、この人物の生死も明らかになっていない。米当局者によるとアルシャバーブ側に数人の死者が出たが、米軍に死傷者はなかったという。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によるとSEALsは海から上陸し、海岸近くにある幹部の自宅を急襲した。米政府高官が同紙に語ったところでは対象のアルシャバーブ幹部は殺害されたとみられるが、SEALsはその死亡を確認する前に撤退せざるを得なかったという。またソマリア政府高官は同紙に作戦は米軍が実施したもので、事前に通知を受けていたと語った。

 米安全保障当局者が同紙に語ったところでは、この作戦は10日ほど前から計画されていた。アルシャバーブが先月ケニア・ナイロビの高級ショッピングモール「ウエストゲート(Westgate)」で67人が死亡する襲撃事件を起こしたことで計画が早められたという。

■アルシャバーブ「英・トルコの特殊部隊に襲われた」

 アルシャバーブは、英国とトルコの特殊部隊が夜間に海と空からアルシャバーブの基地を攻撃したと主張したが、英国は一切の関与を否定している。

 ブラバの過激派の指導者たちは、ヘリコプター1機からロープを伝って降りてきた特殊部隊がアルシャバーブ幹部の自宅を襲おうとしたが、襲撃は失敗したと話している。

 アルシャバーブのアブドゥルアジズ・アブ・ムサブ(Abdulaziz Abu Musab)報道官はAFPに対し、「英国とトルコの特殊部隊が沖合の大型船から出てきた小型ボート2隻で海から上陸し、警備係1人が殺されたが、援護部隊が駆けつけたため白人たちの作戦は失敗に終わった」と語った。「外国人らがいたところに大量の血が残っていたので、われわれは相手の何人かを負傷させたのかもしれない」(c)AFP/Olivia HAMPTON