【10月5日 AFP】雑誌で見たモデルのようにスリムになりたい米国の10代の少女たちが最近夢中になっているのが「サイギャップ」(太ももの隙間)だ。両脚をそろえて立っても、太ももが付かないほど痩せた脚が良いとされる。

 交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)やブログサービスのタンブラー(Tumblr)、画像共有SNSのピンタレスト(Pinterest)には「太ももの隙間」の写真があふれ返っている。「成功」を見せびらかしたい少女や、逆に自分では「失敗」だと思っている少女たちが投稿した、時に目も当てられないほど痩せ細った脚のアップ写真だ。

「このスキスキの隙間を見て」と書き込むユーザーもいれば、「みんなで一緒にきれいなサイギャップ、ぺたんこのお腹を目指そう!」と周りを励ます投稿もある。「完璧さに飢えるわたし」と自称するユーザーは、「平凡な/サイギャップの存在しない」脚について愚痴り、「でぶでぶでぶでぶ」と自嘲する。

■骨格の構造から「多くの人にとっては夢想」

 専門家らによれば美脚への執着は今に始まったことではないが、米国の10代の生活に24時間影響を与えるソーシャルメディアによって大々的に増幅された。

 ツイッター(Twitter)には、英モデルのカーラ・デルビーニュ(Cara Delevingne)の超スリム体形をたたえるファンのアカウント「カーラのサイギャップ(Cara's Thigh Gap)」があり、フェイスブックやさまざまなウェブサイトでは「全能の隙間」を手に入れるエクササイズが紹介されている。

 しかし臨床心理学者のバーバラ・グリーンバーグ(Barbara Greenberg)氏は、たとえ極端なダイエットやエクササイズをしても「サイギャップ」はほとんどの女性にとって「夢想」でしかないと言い、「多くの女性は太ももの間に隙間ができるようにはなっていない。そういう骨格なんです」と説明する。

 グリーンバーグ氏が言う「非現実的な執着心」を持ってしまった少女たちは危険な道に入りかねない。ますますプレッシャーを感じ、抑うつ状態や自殺行為に及ぶことさえある。深刻な摂食障害は脳や骨に何年も続く悪影響を与えることもある。サイギャップについて語る少女たちのページでも、断食ダイエットや自己嫌悪はよく見かける話題だ。

■マスコミがあおる理想像

 アリゾナ大学(University of Arizona)の社会学者シャノン・スナップ(Shannon Snapp)氏は、雑誌や映画、テレビなどのマスメディアが「痩せた理想像」をあおっていると批判し、それに乗らないよう消費者に呼び掛けている。「若い女性や少女たちは、そうしたメッセージを内面化して自分のものにしてしまっている。成功したり人に好かれたりしたければ、こういう外見にならないと、胸以外はどこもすっかり痩せないと、と。生まれて初めて大人の女性と比べられる思春期にいる10代の少女たちはおそらく、そういう外見にならなくてはというプレッシャーを最も感じやすいのではないでしょうか」

 サンノゼ州立大学(San Jose State University)の社会学者ナタリー・ボーロ(Natalie Boero)氏も「痩せ願望は、社会に認められ、適応したいことの表れ」だと言う。「若い女性は自分たちが、性差別的で体形差別的な文化の中にいること、自分たちの体は『通貨』と一緒なことに気付いていて、その上で社会における自分の価値を上げようとしている」

 社会学者たちは、体型と社会的ステータスを結びつける紛れもない「トレンド」があると指摘する。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)の身体イメージに関する専門家、アビゲール・セーギー(Abigail Saguy)氏によれば「痩せた体を獲得することは、社会的地位が高いことを示唆する一つの方法となっている」。しかしそれよりも悪いのは「太っていることが、現在の社会的地位の低さと結び付くだけではなく、将来の社会的地位の低さまで予言しかねないことだ。研究では、太っている少女や女性ほど雇用されにくく、雇用された場合も賃金がより低いことが示されている」という。体が大きな女性は結婚する可能性も低い傾向があるという。

 しかし、サイギャップに対抗する動きも出てきている。「太ももの隙間」への執着心をからかう側の少女たちもソーシャルメディアを駆使している。動画投稿サイト、ユーチューブ(YouTube)にアップされた「偽サイギャップを作る5つの方法」と題したビデオでは、「隙間が欲しい」という少女たちに「脚を離せばいい」と提案している。またツイッターでは「わたしにはサイギャップがないから、ケータイがトイレに落ちずに助かった」と告白した少女もいる。(c)AFP/Fabienne FAUR