コンゴの女性のために尽くす、ナンセン難民賞受賞の修道女
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【10月5日 AFP】難民支援に尽力する人に贈られる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のナンセン難民賞(Nansen Refugee Award)。今年の受賞者は9月17日に発表され、コンゴ民主共和国(旧ザイール)の修道女アンジェリーク・ナマイカ(Angelique Namaika、46)さんに決まった。
虐待を受けた女性たちを助けるために人生をささげてきたナマイカさんは受賞の知らせを受け、自分の活動に終わりはないと語った。「キリストは人助けのためにどこへでも行きました。彼に休む暇などありませんでした。私も同じです」
彼女は長年、ウガンダの反政府武装勢力「神の抵抗軍(Lord's Resistance Army、LRA)」の手から逃げてきた女性たちを支援してきた。今回、その功績が認められてナンセン難民賞を受賞した。賞金は10万ドル(約980万円)。
「あるドイツ人の修道女に会ったときに、自分も修道女になりたいと思いました」と、ナマイカさんは振り返る。「彼女は病人の世話をするために何度も来てくれましたが、いつも病人が多すぎて、彼女には一息つく暇も食事をする時間もありませんでした。だから私は彼女が休めるように手伝おうと思ったのです」
■神の抵抗軍の被害者にも救いの手
ナマイカさんの活動は2003年から始まった。アフリカで最も残酷な武装勢力のひとつであるLRAから誘拐や暴行などの被害を受けた女性たち、またLRAによって両親を殺されたりエイズで親を亡くした孤児たちへの支援だ。
ナマイカさんはコンゴ民主共和国の北東部、オリエンタル(Orientale)州のケンビサ(Kembisa)という村の敬虔(けいけん)なキリスト教徒の農家に生まれた。6人きょうだいの1人で、教育の一部は祖母から受けたという。その後、医療支援活動を行うアウグスティノ修道会に入り、同州のドルマ(Doruma)という町で12年間、修道女としての修行を積んだ。
そして2003年、ナマイカさんはさらに北のドゥング(Dungu)に移った。土壌が肥沃な地域で、LRAなどの武装勢力が拠点とする地域だ。
現在、国際刑事裁判所(International Criminal Court、ICC)から逮捕状が出ているジョゼフ・コニー(Joseph Kony)容疑者が率いるLRAは、殺人、レイプ、腕や脚などの切断、略奪、少年兵の徴用、子供の性的搾取などで悪名高い。
ウガンダ政府に追われたLRAは2005年、国境を越えて周辺国へ逃亡した。ドゥングにいたナマイカさんは魔の手が迫ってくるのを感じ、2009年10月、LRAから逃れるためにこの町を出た。戻ってきたのは翌年の1月だ。
コンゴ民主共和国軍は、もはや国内でLRAは活動していないとしているが、ドゥングは国内で最もLRAの被害が大きかった場所で、住民32万人のうち11万人が避難民となっている。国連(UN)はLRAによる攻撃は大幅に減ったとしているが、今年だけで約50件の事件が発生し、17人が死亡したと報告している。
ナマイカさんはいつも自転車でドゥングのほこりっぽい道を走る。この地域の主要言語、リンガラ語の識字教育を行ったり、料理や洋裁も教える。「シスターがいなかったら、私は学校に行けていなかった」と、19歳のアンヌ(Anne)は言う。「私は料理を習いました。稼いだお金で学校にいくことができ、子供の医療費も払えるのです」
アンヌは一方的にLRAの戦闘員の妻にさせられ、妊娠させられてLRAから逃げてきたという。「アンヌ」というのも彼女の本当の名前ではない。逃亡を試みた幼い少女を死ぬまでリンチする行為に強制的に参加させられたこともあったという。「シスターは私が経験したことを忘れるようにと助言してくれます」とアンヌは言う。
ナマイカさんの願いは、自分の支援活動がもっと拡大すること。「私はこうした女性たちと弱い立場に置かれた子供たちのスポークスウーマン。だから私はこの栄誉を彼らにささげます。彼らの存在なしに私がこの賞を受けることはなかったのですから」(c)AFP/Habibou BANGRÉ