【10月2日 AFP】売り上げを伸ばそうとインターネットにうそのレビューを書き込ませる、いわゆる「やらせ」の口コミマーケティングがここ数年、ネット上で横行している。だがニューヨークでは先日、州当局による一斉摘発があり、こうした手口を一掃するのに不可欠なショックを関連業界にもたらした。

 ニューヨーク州司法長官事務所は、関連する19企業に対し「やらせ」を止めるよう命じ、レストラン口コミ評価サイトのイェルプ(Yelp)やグーグル(Google)のSNSグーグルプラス(Google+)のオンライン評価を操作したことに対する罰則として、総額35万ドル(約3400万円)の支払いを命じた。

 州司法長官事務所はブルックリン(Brooklyn)地区に偽のヨーグルト店を開いて捜査を開始し、ネット上での注目度を高めるいわゆる「SEO(検索エンジン最適化)対策」企業に支援を求めた。すると業者らはフィリピンやバングラデシュ、東欧からライターを雇ってやらせの書き込みをさせていたことがわかった。

■やらせレビューの増加傾向

 やらせがどこまでまん延しているかについては不透明だが、英調査会社ガートナー(Gartner)の2012年の報告書によればオンラインレビューの2~6%は「やらせかうそ」で、2014年までにはこの数字が10%前後になる見通しという。

 報告書によると、消費者の31%はネットの口コミを参考にしている。広告よりも自分と同じ一般消費者の声を信頼するからだ。

 こうした高評価は、ホテルやレストラン、医師や弁護士まで多くの事業にとってカンフル剤になり得る。たとえばホテルやレストランは、評価が上がれば予約が増える可能性が高まる。

 米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)のダンカン・サイメスター(Duncan Simester)氏とノースウエスタン大学(Northwestern University)のエリック・アンダーソン(Eric Anderson)氏は、ある大手アパレルメーカーのレビューの5%が、その製品を購入したことのない人によって書かれていることを突き止めた。それらのレビューは平均より「かなり悪い評価」となっていたが、その動機は分からなかった。

 両氏の論文によれば、こうした偽のレビューは同メーカーをよく利用する顧客によって書かれていた。メーカーのブランドマネジャーになったつもりだったのかもしれない、と論文は推測している。

■匿名の廃止は「真実の一部を失わせる」

 グーグルは最近、やらせ口コミに対する懸念もあり、匿名のレビューを禁止した。

 だが米ダートマス大学(Dartmouth College)でマーケティングを研究するヤニフ・ドーバー(Yaniv Dover)氏は、匿名を禁じることのデメリットを次のように指摘した──実名になると人々はリスクを避ける傾向がある──。

 ドーバー氏は、匿名でないと「ポジティブな評価をしがちだ。友人にネガティブな人間と思われたくないからだ」と述べ、「匿名をなくせば真実の一部を失わせることになる」と語った。

 やらせ口コミを見つけるのは容易ではないが、危険信号を見つけることはできる。ある専門家は、ホテルやレストランなら、書き込みに詳細な記述がない場合は注意が必要だとした。

 またガートナーの報告書によれば、関連性のない複数の商品やサービスについて書き込みをしているレビュアーは要注意。過度な絶賛もやらせの兆候のひとつだ。

 とはいえ大半の研究者は、偽のレビューが横行しているにもかかわらず、こうしたレビューシステムは比較的機能していると述べる。

 ダートマス大学のドーバー氏は「市場の是正メカニズムが働いている」としながら、「レビューシステムは基本的に良いものだ。ユーザーが作り上げるコンテンツは、メーカーと消費者をうまくマッチさせることができる」と付け加えた。(c)AFP/Rob Lever