【10月1日 AFP】2016年の米大統領選への出馬が取り沙汰されているヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官に焦点を当てて製作予定だったドキュメンタリー映画が、一部の共和党議員から「大統領選に向けた宣伝だ」との批判が上がったことなどを受け、製作中止に追い込まれた。また、ヒラリー氏を描く別のテレビシリーズの製作中止も発表されている。

 米CNNテレビ向けに同映画の製作準備を行っていたのは、アカデミー賞(Academy Awards)受賞歴のある映画監督チャールズ・ファーガソン(Charles Ferguson)氏。映画の製作にあたり、共和党からの批判の他、民主党議員らの非協力的な姿勢に直面したと話している。

 ファーガソン監督は米ニュースサイト「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」上のブログで、「各所にインタビューを申し込んだ結果、この映画製作への協力に興味を示してくれる人は誰も、一人たりともいないことが分かった」と述べている。100人以上の関係者にコンタクトを取ったところ、顔出しのインタビューを承諾したのは2人だけだったという。

 ファーガソン監督は、金融危機を題材にした2010年のドキュメンタリー映画『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実(Inside Job)』でオスカーを獲得。新作ドキュメンタリーでは、国務長官、上院議員、そして大統領夫人を務めてきたヒラリー氏についての「野心的で論争を巻き起こす、非常に視覚的な」映画を作る構想を練っていたという。

 しかし、ヒラリー氏本人も非協力的だった他、一部民主党員からも商業利用を懸念する声が上がった。さらに共和党からは2016年大統領選挙への出馬を検討している同氏のイメージアップを狙うものだとして批判を受けた。同監督いわく、「両党ともに本作を望んでいなかった」という。

 同監督はブログで「悩み抜いた揚げ句、自分が誇れない映画を作ることはできないという結論に至った。それゆえの中止だ。(CNNから圧力があったわけではない、むしろ逆だった。)これはクリントン家側の勝利、そして、いまやマネーマシンと化してしまった(民主・共和)両党の勝利であり、メディアと米国民にとっての勝利とは言えない」と書いている。

 ファーガソン監督の発表から数時間後、米NBCエンターテインメント(NBC Entertainment)は、ヒラリー氏を描いたミニシリーズの製作中止を発表。AFPへ送付した声明では、「映画/ミニシリーズ製作予定表を見直した結果、ヒラリー・クリントン氏のミニシリーズの製作中止を決定しました」と述べている。(c)AFP