【9月27日 AFP】オランダ警察当局の鑑識班にこのほど、ネズミが新勢力として加わった。犯罪のにおいを嗅ぎ分けるよう訓練されたネズミたちは、創作上の名探偵にちなんでデリック(Derrick)、トムソンとトンプソン(Thomson and Thompson)、マグナム(Magnum)、ポワロ(Poirot)と名付けられ、未来の鑑識捜査を担う存在として期待されている。

   「われわれの知る限り、警察の捜査に活用するためにネズミを訓練したのはわれわれが世界で初めてです」と、オランダ警察「イノベーション」センター主任のマルク・ウィべス(Mark Wiebes)氏は語った。

 警察犬1匹を育成するのに何万ユーロもの費用がかかり、およそ8か月を要するのに対し、ネズミ1匹の訓練費用はわずか10ユーロ(約1300円)程度。ロッテルダム(Rotterdam)市内の建物で訓練を担当している警察官によれば、夜行性の習性に合わせて暗闇の中で訓練すると10~15日ほどで薬物や火薬などさまざまな異臭を嗅ぎ分けられるようになるという。ちなみに、雌のネズミより雄のネズミのほうが「よい仕事をする」そうだ。

   「警察ネズミ」の試験は前途有望で、ウィべス主任は早ければ来年早々にも実際の捜査に投入したいと話している。

 ただし能力的には、全ての訓練を終えた警察犬には到底かなわない。最大の問題は、ネズミが「恥ずかしがり」だという点だ。ネズミは新しい環境になかなか適応しないため、犯罪現場での遺体捜索や輸送コンテナ内での薬物捜索などは難しいかもしれないという。訓練担当官は、ネズミが飼育されている環境に現場で採取したサンプルを持ってくる必要があると指摘した。

 もっとも、オランダ警察としては警察犬を全てネズミに置き換える予定はないという。それぞれ優れた性質が異なるからだ。「犬は生来のハンターで、見知らぬ環境を探索することを恐れない。しかし、閉ざされた狭い空間ではすぐに飽きてしまい、ネズミのように活動することはできない」とウィべス主任は語った。(c)AFP/Nicolas DELAUNAY