【9月12日 AFP】米アップル(Apple)が10日に発表したスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」の廉価版「5C」は、中国での販売価格が700ドル(約6万9900円)を超える。多くの消費者にとって手に届かない水準で、アップルが世界最大の携帯電話市場である中国で売り上げを確保できるのか疑問符が付いている。

 中国のスマートフォン市場でのアップルのシェアはわずか5%。5Cの投入は、中国を中心とした市場で競合他社の低価格携帯電話に対抗するための戦略とされている。

 だが、アップルの中国でのオンラインストアでは、5Cの16GBモデルの価格は4488元(733ドル、約7万3300円)となっている。これは従来機のiPhone5より若干安い程度で、5Cの米国での価格549ドル(約5万4800円)を大幅に上回る。また、上位機種5Sの価格は中国では5288元(864ドル、約8万6300円)から、米国では649ドル(約6万4800円)に設定されている。

 ここ数か月はアップルが新興市場向けの廉価モデルを発表するとの臆測が流れていたが、価格が発表された直後から中国ではネット上で高過ぎるという否定的な声が次々と上がった。中国版ツイッター「新浪微博(Sina Weibo)」には「5Cは1000~2000元(約1万6000~3万3000円)だと思っていたのに」、「へえ、これがいわゆる廉価版?中国では一番安いので4488元だって。アップルは中国人を農民みたいに扱う」などの投稿があった。

 米国では、携帯電話通信会社(キャリア)との長期契約とセットにすれば、5Cは99ドル(約9900円)で購入できる。一方、中国では契約と合わせた携帯端末の大幅値引きはない。購入時に多額の前金支払いが求められ、契約期間中に払い戻される仕組みになっている。

■「期待外れ」とアナリストたち

 アナリストらからは5Cと5Sは「期待外れ」との声が上がっている。北京(Beijing)を拠点とするインターネット市場調査会社アイリサーチ(iResearch)のアナリストは「価格に見合わない」と指摘。韓国のサムスン電子(Samsung Electronics)や中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ、Huawei Technologies)などスマートフォンを扱う企業は今や、アップルのライバル企業としての地位を確立したとしている。中国の国産スマートフォンの多くは100ドル(約1万円)程度で売られている。

 アップルよりも幅広い価格帯の携帯を扱うサムスンは大型画面でユーザ―から支持されている。また、一部のモデルに付属されているタッチペンで携帯の使い勝手が良くなっているとの評価もある。さらに、サムスンの機種はアップルよりも安めだ。iPhone5の比較対象となるサムスンの「ギャラクシーS4(Galaxy S4)」の価格は中国のアマゾン・ドットコム(Amazon.com)で670ドル(約6万6900円)前後となっている。

 サムスンの今年第2四半期の中国でのスマホ販売台数は1530万台と、第1四半期(1250万台)を上回った。スマホ市場でのシェアは19.4%だった。

 アップルが11日に北京で開いた報道陣向けのイベントでは、招待された報道関係者は限られており、中国内外の多数の記者が会場から締め出された。こうした記者がアップルの広報担当者を囲んで、不満をぶつける場面もあった。イベントに入れなかった中国の記者は「中国を非常に重要な市場として位置付けているとアップルは強調するが、このイベントのやり方を見てくれ」と語った。(c)AFP/Fran WANG