禁煙で太る原因、大食ではなく腸内細菌か スイス研究
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【8月30日 AFP】禁煙した人が太りやすい理由は、食欲が増すことだけではなく、腸内細菌の変化にあるかもしれないとの研究論文が29日、米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)で発表された。
これまでの研究では、禁煙すると最初の1年間で体重が平均4~5キロ増加することが明らかになっている。
だが、スイスのチューリヒ大学病院(Zurich University Hospital)の研究者らが発表した論文によると、体重が増加する原因は、禁煙前よりも多くの量を食べていることにはないかもしれないという。
禁煙後にカロリー摂取量を減らした人でも太る傾向があると指摘するゲルハルト・ログラー(Gerhard Rogler)教授は、たばこをやめた人の腸内細菌叢(そう)の組成に生じる変化が体重増加の原因かもしれないことを、他の研究者らと共に突き止めたと話している。禁煙すると腸内の細菌株の多様性が変化し、肥満症患者の腸内に多くみられるプロテオバクテリアとバクテロイデスという2種類の細菌が増えることが明らかになったという。
これらの細菌は、エネルギーを非常に効率良く使用し、消化されにくい食物繊維を分解すると考えられている。結果として、食べ物が排せつ物として体外に排出されずに、通常よりも多く脂肪に変換されることになる。
スイス国立科学財団(Swiss National Science Foundation)の支援を受けて行われた今回の研究では、ボランティア20人が9週間にわたって提供した便のサンプルに含まれる腸内細菌の遺伝子的特徴を調査した。ボランティアの構成は、非喫煙者5人、喫煙者5人、調査開始後1週間で禁煙した人が10人だった。
喫煙を続けた人と非喫煙者との間で、腸内細菌の構成にほとんど差は見られなかった。だが、禁煙したばかりの人では、プロテオバクテリアとバクテロイデスの数が増加に向かうという明らかな変化が見られることが調査でわかった。
この調査で禁煙した人は、飲食習慣は禁煙前と変わらなかったと話したが、体重は調査期間中に平均2.2キロ増加していた。
研究者らは体重増加と細菌叢の構成の変化の間の明白な関連性を証明していないが、ログラー教授は、その可能性を示唆する研究は他にも多数あると指摘。これらの発見によって生じる多くの疑問に答えるには、さらなる研究が必要だという。
だがログラー教授は、環境が消化管機能にどのような影響を及ぼすかにさらなる注意を払うべきなのは明らかだと述べている。「禁煙した人が前より多く食べていないのに太るという話を真に受ける人は誰もいなかった。おそらくわれわれはただ単に、人の話をもっと前向きに信じようとするべきなのだろう」(c)AFP