【8月16日 AFP】南極大陸周辺の海底で、動物の骨を食べる奇妙な蠕虫(ぜんちゅう)の新種2種を発見したとする論文が、14日に英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」で発表された。

 骨食海洋虫オセダックス(Osedax)属に属する新種2種は、死んだクジラなどの動物の骨を餌にしており、生態系の環の中で重要な役割を果たしているという。

 「Osedax antarcticus」と「Osedax deceptionensis」と命名されたこれら新種は、南極海(Southern Ocean)の海底で、クジラの骨や難破船の残骸の末路について調査を行っていた国際チームが発見した。体長は数ミリで、体幹からは指のような付属器官が4本生えている。南極周辺では、以前にも5種類のオセダックスが発見されている。

 チームは新発見に沸く一方で、深海に沈んだ材木などでよく見つかる「キクイガイ亜科(Xylophagainae)」と呼ばれる木食性の貝がまったく見つからないことに驚いたという。

 論文の共著者、英ロンドン(London)の自然史博物館(Nautral History Museum)のエードリアン・グラバー(Adrian Glover)氏によると、チームは「ディープシー・ランダー」と呼ばれる深海潜水艇を用い、巨大なクジラの骨と木材を海底に置き、1年2か月たった後に回収した。その結果は一目瞭然だったという。骨は赤いオセダックスでびっしりと覆われていた一方、木材は無傷のままで、木食性動物の痕跡さえなかった。

 海底は地球上で最も生態系の解明が進んでいない場所の一つだが、南極海の海底に木を食べる生物がいないとみられることは、海洋考古学者にとっては朗報だ。南極海の海底には、英国の探検家アーネスト・シャクルトン(Ernest Shackleton)が1914年に行った南極探検の際に乗っていた木製の「エンデュアランス(Endurance)号」など、多くの難破船が沈んでいる。(c)AFP