【8月6日 AFP】女性はほっそりしていて、子どもたちは食べ物を粗末に扱うことはなく、カップルは素敵なセックスを頻繁に行っており、家庭では毎晩のようにグルメな料理を食べている──フランス人にこのようなイメージを持っている人は考え直してほしい。

 英国人作家ピウ・マリー・イートウェル(Piu Marie Eatwell)氏(39)は新著で、理想化されて伝えられることの多いフランスの「神話」の誤りを訂正しようと試みている。フランス訪問者の中には、フランスが実際のところ「普通」であることを知り、落胆する人も多いのだ。

 新著「They Eat Horses, Don't They?(あの人たち馬を食べるんでしょう?)」は、フランスを完璧な場所として描写する多くの書籍に真っ向から対抗する。

   「フランスを、他の国々のように客観的に見るのではなく、自らの持つ理想を反映する場所のようなものとして見なければならないという義務があるかのようです」と、フランス滞在歴10年近くになる著者のイートウェル氏は、AFPの取材に語る。

   「けれど、その効果は、英国人と米国人に自分たちのことを全てにおいてだめな人たちだと感じさせることだけ。自分たちは太っていて、醜くて、子育てができない……そのように感じさせることがいったいなんの役に立つというんでしょう」

 同書は、広範囲な調査に基づいて、フランスの料理、女性、性生活、マナーなどを章別に分析している。

 たとえば、フランス料理は世界中で評価されているかもしれないが、一方で、フランスは米国に次ぐマクドナルド(McDonald's)の市場になっている。さらに、レストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」によれば、世界の「料理の首都」はパリ(Paris)でなく、東京だ。

 フランス人女性はスリムだというイメージに対しては、フランス人女性の42%──成人人口の47%──が過体重であることを、スイス製薬大手ロシュ(Roche)の調査結果で示す。

 それにフランス人は最高の性生活を送っているわけではない。2010年の仏世論研究所(IFOP)の調査によると、フランスのカップルのうち、性生活が好ましくないと回答した人は全体の4分の3に上った。

 イートウェル氏は、新著の前書きで、パリで生活を始めたころの経験をジョーク交じりに語っている。イートウェル氏はパリで働く英国人の夫とともに、同市に移住した。

   「焼きたてのクロワッサン、ビストロの無礼なウエーター、パリの大通りを歩く細身で華やかな女性、昼食時のワイン──これぞフランス!…だと思っていた」 「けれどやがて、この『フランス』体験に亀裂が入っているのに気づき始めた。私が見かける女性の大半は、特段美しくもなければ華やかでもない。礼儀正しいウエーターも多い。カフェのクロワッサンはくたびれて堅くなっていた。かわいいビストロのとなりでは、マクドナルドやファストフードチェーン店がせめぎ合っていた」

■観光客の人気はナンバー1

 当然、フランスの魅力と評判は観光業に多大な効果を及ぼしている。フランスは世界で最も観光客が多い国だ。

 だが一部の観光客にとって、不作法な住民、汚い道路、堅くなったクロワッサンは、耐えられないことのようだ。

 パリで精神科医を30年続けているある日本人医師は、「パリ症候群」という症状を定義づけたほどだ。

   「彼ら(観光客)は現実離れしたイメージを持ってフランスに到着し、攻撃的で無関心な『歓迎』を受け、恐怖と不安に陥る」と同医師は昨年、AFPの取材に説明していた。

 イートウェル氏は、書籍の目的は「フランスバッシング」でないと述べ、フランスを愛していると語る。

   「私はここで暮らすことを選びました。子どもたちもここで育てています。私はフランスが大好き…でもそれは私がフランスをありのままに見ることができるからです」とイートウェル氏は述べる。

 そしてイートウェル氏は最後に、広く根付いた「伝説」の誤解をもうひとつ解いてみせた。フランスの女性は、わき毛も綺麗に処理しているのだそうだ。(c)AFP/Marianne BARRIAUX