【7月30日 AFP】モバイル機器によるインターネット利用が勢いを増しているなか、この動きに適応できたIT企業とそうでない企業との差が出ている。各社の最新の四半期決算にはそのことがよく表れている。

■波に乗るフェイスブック

 米SNSフェイスブック(Facebook)が先週発表した第2四半期決算は、世界最大のソーシャルネットワークである同社がモバイルへうまく移行したことを示した。純利益は3億3300万ドル(約328億円)で、モバイル広告が総広告収入に占める割合は41%に上った。決算発表を受けて翌25日のフェイスブックの株価は30%上昇し、2012年5月の上場初日の水準に近づいた。

■マイクロソフトは「ポストPC時代」に懸念

 マイクロソフト(Microsoft)の状況は異なる。モバイルへの移行が同社主力事業のウィンドウズ(Windows)製品への打撃となり、さらに、同社のタブレット端末「サーフェス(Surface)RT」の「在庫調整」費用として9億ドル(約890億円)を計上。純利益は49億7000万ドル(約4890億円)にとどまった。

 報道を受けてマイクロソフトの株価は11%以上急落。OS(基本ソフト)のウィンドウズ8(Windows 8)は幅広い機器に対応できるよう設計されているものの、ポストPCの世界における同社への懸念が広がった。

 調査会社モバイルトラックス(MobileTrax)のジェリー・パーディー(Gerry Purdy)氏は、企業はモバイルを第一に考える必要性が出てきたと語る。フェイスブックはそれに成功したのだという。「モバイルはIT世界の中心になってきている」と同氏は述べた。

■いまだに検索頼みのグーグル

 米グーグル(Google)はこの第2四半期決算で昨年買収したモトローラ(Motorola)の携帯機器部門からの損失を計上した。モバイル広告の成長は鈍化しており、純利益は32億3000万ドル(約3180億円)と増加したものの、1クリック当たりの広告料金を示すコスト・パー・クリックは低下した。

 グーグルの株価は、同社が成長を継続できるのかアナリストらが疑問を投げかけたことで下落した。ハドソン・スクエア・リサーチ(Hudson Square Research)のダニエル・エルンスト(Daniel Ernst)氏は、「グーグルは今もなお、最も革新的なテクノロジー企業の1つであり、最高のデジタル広告ツールではある。しかし、グーグルの収益は今もなお、実質的には検索事業以外に広がっていない」と指摘する。

■グローバルな成長を見据えるアマゾン

 黒字が予想されていた米インターネット小売大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)は、700万ドル(約7億円)の純損失を発表した。株価は一時下がったものの、その後回復した。

 この決算は、タブレット端末キンドル(Kindle)を展開するアマゾンが各国市場での足場確保とデジタルコンテンツ拡充のため、マーケティングとテクノロジー、コンテンツに多額の投資を行っていることを示している。

 調査会社ベンチマーク(Benchmark)のアナリスト、ダニエル・カーノス(Daniel Kurnos)氏は、アマゾンの巨額投資は短期的には利益を損なっているものの、電子書籍やテレビ番組などのデジタルコンテンツを拡充してグローバルに成長する態勢を整えつつあると指摘する。

■イノベーションの継続がカギ、アップル

 iPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)、iTunes(アイチューンズ)などの製品を持つ優良モバイル企業の米アップル(Apple)は、スマートフォン(多機能携帯電話)の好調な販売により、市場予想を超える69億ドル(約6800億円)の純利益を上げた。

 しかし今後もアップルが急速に追い上げるライバル各社に先行できるペースでイノベーションを続けられるのか疑問視する見方も出ている。アップルはスマートフォンとタブレットの両方で市場シェアを減らしつつあり、そのことで同社のエコシステムが脅かされている。

 インディゴ・エクイティー・リサーチ(Indigo Equity Research)のニコラス・ランデルミルス(Nicholas Landell-Mills)氏は、「アップル製品はもはや最先端ではない。アップルは効果的で革新的な新製品やサービスの導入、製品ラインアップの拡大などに失敗した。競合他社は既に追い付いた」と、アップルの先行きに悲観的な見方をしている。

 一方、自分はアップルについて「かなり忍耐強い方だ」と言う調査会社IDCのラモン・ラマス(Ramon Llamas)氏は、ティム・クック(Tim Cook)最高経営責任者(CEO)が約束した「驚異的な新製品」を待っていると語った。それはウェアラブル(身につけることのできる)電子機器の可能性もある。ラマス氏は「もしかしたらまた新たな製品カテゴリーを作り出して、収益性が上がるかもしれない」と語った。(c)AFP/Rob Lever