【6月22日 AFP】著名な家系に生まれながらも、親族の多くを自殺によって亡くしてきた米女優のマリエル・ヘミングウェー(Mariel Hemingway)さん(51)が20日、ハリウッド映画は薬物やアルコールへの依存を美化してはいけないと訴えた。

「ハリウッドには、問題の原因となる依存などを美化しないようにする責任があると思う」と、米首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)で報道陣に対し語ったマリエルさん。ウディ・アレン(Woody Allen)監督のロマンティックコメディ映画『マンハッタン(Manhattan)』(1979年)などへの出演で知られる女優で、最近は健康なライフスタイルの提唱者としても有名だ。

 ワシントンには、映画祭「AFI Docs」でのバーバラ・コップル(Barbara Kopple)監督のドキュメンタリー映画『Running from Crazy』の上演会のために訪れた。同映画は、家族の薬物乱用や精神疾患、自殺などに苦悶するヘミングウェー家に焦点を当てている。

 マリエルさんは、米文学の巨匠である祖父アーネスト・ヘミングウェー(Ernest Hemingway)をはじめ、姉でモデルだったマーゴ・ヘミングウェー(Margaux Hemingway)さんなど、親族7人を自殺で失っている。

「確かに(家族に伝わる)呪縛だとは思う」と語るマリエルさんは現在、2児の母。サンフランシスコ(San Francisco)郊外に住み、ヨガを教えながら、心身を一体として捉え周りの環境と調和する「ホリスティックな」生き方に関する本を執筆している。「でも、この映画を製作したことや、今の私の生き方から、私もその呪いに縛られているとはもう思わない」

 またマリエルさんはAFPの取材に対して、精神疾患は遺伝的なものだとする説を否定し、「関係する要因すべてを見なければいけない」と述べた。「私の家族の中で自殺をした人は全員、少なくとも何かに依存していた。ドラッグやアルコールで『自己治療』しようとしていたのです。こうしたことは全て、非常に複雑です。だから、私は自分のバランスや健康を支えてくれることが分かっているライフスタイルを選んだのです」

 米疾病対策センター(Centers for Disease ControlCDC)によると、ベビーブーム世代を多く含む現在35~64歳の米国人の自殺者数は、ここ10年間で28%増加した。2010年の自殺者数は3万8364人で、交通事故による死者3万3687人を上回っている。

 米自殺リスク評価センター(Center for Suicide Risk Assessment)の創設者ケリー・ポズナー(Kelly Posner)氏は、自殺で亡くなった人の90%には精神疾患が潜んでおり、中でも多いのは抑うつだという。ポズナー氏は「残念なことに治療を必要とする人の多くが、治療を受けていない」と指摘している。(c)AFP