【5月28日 AFP】経済危機に陥っているイタリアでは自動車よりも自転車の方が売れている。ミラノ(Milan)の自転車利用者は、ミラノは自転車のライフスタイルに適した整備がされていると話す一方、首都ローマ(Rome)の自転車利用者は交通量の多い通りで日々、厄介な目に合っているという。  イタリアの一部の都市では自転車のシェアリング構想や自転車専用道路、市民の意識を高める計画などがある一方で、他の都市では自転車はあまり受け入れられていないのが現状だ。

 イタリア・バイコロジー推進協議会(Italian Federation of Friends of the Bicycle)の会長、ジュリエッタ・パリアッチョ(Giulietta Pagliaccio)氏は「経済危機は交通を含め、すべての人に影響を及ぼしている。ライフスタイルの小さな革命が起こりつつある」と話し、「自転車という交通手段を再発見した人をたくさん見てきた。短い距離に合ったその容易さ、単純さ、スピードだ」と語った。

 自転車業界連合とインフラ・運輸省が発表した統計によると、2011年の自転車の販売台数は車よりも2000台多かったが、この差は12年に20万台超に拡大した。自動車業界は12年の販売台数が20%減少した。

 バイコロジー推進協議会のパリアッチョ会長によると、ローマは自転車利用者にとって特に「困難な」都市で、一般に、イタリアの南半分は道路の状態が悪く、自転車専用道路がほとんどないなど、環境が良くないという。

 同会長はまた、考え方は変化し始めているものの、政治家は自転車に優しい政策について「極めて消極的」なままだと述べ、「政治家は票を失うことを恐れている。すべてがこうした視点で行われ、都市のありかたについての長期的な構想が欠けているので非常に恐ろしい」と加えた。

■売れ筋は折り畳み自転車

 イタリア二輪車工業会(ANCMA)の自転車部門責任者ピエロ・ニグレッリ(Piero Nigrelli)氏は、自転車の価値についての政治家の認識不足には驚かされると話す。また、ドイツには年間700万人程度の自転車旅行者がおり、その経済効果は90億ユーロ(約1兆1900億円)に上っていると述べ、イタリアにこうした利益をもたらすのに必要なのは自転車専用道路へのほんの少しの投資だとした。

 ローマでは、舗装路に散らばる廃品や定期的に洪水で水に漬かる土手沿いの道など、自転車利用者は日々直面する障害に不満を持っている。自転車ロードレース、ジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)で有名なイタリアだが、交通手段として自転車を受け入れる環境はまだ整っていない。

 ただ、ミラノでは、自転車シェアリングシステム「BikeMi(バイクミー)」が市民から熱烈に支持され、折り畳み自転車が一番の売れ筋となっている。ミラノの自転車専門店では、折り畳み型でスーツケースのように持ち運べるイギリスのブロンプトン(Brompton)など、都市生活向けのモデルを店頭に置き始めている。

 世界最古の自転車メーカー、イタリアのビアンキ(Bianchi)は、車から自転車に乗り換えようとしているイタリア人の需要に対応するため、電動自転車の市場に乗り出した。ビアンキのボブ・イッポリート(Bob Ippolito)CEO(最高経営責任者)はAFPに、同社では通勤用自転車が最も速いペースで売れていると話し、一部の顧客が車2台ではなく、車1台と自転車1台を持つことを好むようになっていることなどが背景にあると説明した。 (c)AFP/Amelie Herenstein