【5月15日 AFP】米国では、セミの大群の侵略が目前に迫っている。17年もこの時を待ち続けてきた、無数の巨大なコオロギに似た昆虫が、土の中から姿を現す態勢を整えている。

 米東海岸を覆い尽くすと見られているこのセミは、すでにノースカロライナ(North Carolina)州とニュージャージー(New Jersey)州で最初の目撃例が出ており、昆虫マニアのサイト「cicadamania.com」に13日、情報が投稿された。

 だが、セミの襲来が本格化するのは今月、地表の平均気温が17度に達したときだ。ピーク時には、1平方メートル当たり1000~2000匹のセミがひしめき合うこともある。セミは世界中で見られるが、この周期的現象が起きるのは米国だけだ。

■一定周期で出現する「周期ゼミ」

「周期ゼミ」は17年ごとに成虫になり、耳をつんざくような協奏曲の中で交尾し、産卵し、死んでいく。

 この周期ゼミの子孫が次に見られるのは17年後で、地上に姿を現す日が来るまで、地面から20センチほどの深さの穴の中で、木の根の樹液を餌としてすごす。

 周期ゼミには15の年次集団があり、ローマ数字で分類されている。年次集団の大半が17年周期だが、13年ごとに繁殖する年次集団が3つあり、周期が重ならないようにずれているので、毎年最低1つの年次集団がふ化することになる。

 年次集団がすべて同じ規模で作られているわけではなく、今年の「年次集団 II」の規模は大きい。

 生物学上は半翅目(はんしもく)に分類されるこのセミは、体長が約2~3センチで体色は黒、赤い目とオレンジ色の翅脈(しみゃく)のある半透明の羽を持つ。人を刺したりはせず、若木から樹液を吸い上げるだけだ。

 鳴き声は大きく、雄ゼミは、交尾に誘う鳴き声を鼓膜(こまく)と呼ばれる腹部の膜で発生させ、雌ゼミに向けて発する。この独特の鳴き声を数千の集団が発すると、耳をつんざくような轟音になる。

■死後は動物の餌に、時には人間も

 周期ゼミの大半は短期間で死んでしまい、鳥や、ネズミや犬などの小動物の餌になる。

 米メリーランド大学(University of Maryland)の昆虫学者、マイケル・ラウプ(Michael Raupp)氏によると、もっと大型の動物も、セミを好んで食べることが知られているという――例えば「人間」だ。「セミは、ステーキより高タンパクで、低脂肪だ」と言う同氏は、生で食べるのが好みだという。

 セミの食べ方に関する簡易マニュアルを作成した、同大学・生物学専攻の学生、ジェナ・ジャダン(Jenna Jadin)氏によると、虫を食べることに抵抗を感じる人には、節足動物のカニやロブスターのように扱うことを勧めているという。

 同氏のおすすめは、セミを4~5分間ボイルして、たまねぎ、じゃがいも、とうもろこしを添えた「メリーランドゼミ」や、しょうゆ、ニンニク、カブを添えた「上海ゼミ」など。バジル、オリーブ、オニオンとセミを散らした「セミピザ」もおいしいかもしれないとのことだ。(c)AFP/Fabienne Faur