オランダ北部のガス採取で地震急増、「経済優先」の政策に怒る住民
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【4月3日 AFP】オランダ北部の遠隔地にある、欧州最大のガス田の真上に住む人々は、ガス採取の影響で頻発するようになった地震に対する怒りをあらわにしている。
オランダ最北端からわずか数キロメートル離れたミッデルストゥム(Middelstum)に住むヤン・ボス(Jan Bos)さんとマルタ(Martha Bos)さん夫妻の家畜小屋では、壁に開いた長さ1メートル、幅5センチメートルの割れ目から、凍り付くような隙間風が吹き、冷たい日の光が差し込んでいる。また夫婦が住む20世紀初頭に建てられた家屋には、およそ15か所のひび割れがあり、玄関の床の一部は約7センチ沈下している。
48歳のマルタさんは「ここには25年も住んできましたが、ここ5年間で地震が頻繁に起こるようになりました」とAFPに語った。「引っ越したくはありません。ここで生活を築いてきました。でも、いつか大きな地震が起こるのが怖いのです」
夫婦の家は、オランダ北部フローニンゲン(Groningen)州にある欧州連合(EU)域内で最大のガス田の上に立っている。米エネルギー省エネルギー情報局(Energy Information Administration、EIA)によると、世界第10位の天然ガス産出国であるオランダは、このガス田から全産出量の3分の2を採取している。
同地域では今年2月だけで、マグニチュード(M)2を超える規模の地震が4回起きている。専門家によると、比較的小さな規模の地震でも、震源の深さがわずか3キロほどのため、震度は大きくなるという。
これらの地震は、大規模なガス採取によって地下に生まれる巨大な空洞が原因で「自然に」起こるものだが、同国の鉱業を監視する公的機関「SoDM」のヤン・デヨング(Jan de Jong)監査官が今年発表した報告書によると、オランダがガス生産量を年間500億立方メートル以上に倍増した2000年以降、地震発生頻度はますます増えているという。SoDMの統計によると、1991年~2000年には110回の地震が発生したが、00年~13年の間には500回以上に増加した。
石油大手の英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)と米エクソンモービル(Exxon Mobil)の合弁会社で、同地域のガス採取を行うオランダ石油会社(NAM)は、地震と採取作業の関連性を認めており、1億ユーロ(約120億円)の補償金の支払いを申し出ている。
だが1000人のメンバーからなる住民団体「Groninger Bodem Beweging(フローニンゲン大地運動)」のコリーナ・ヤンセン(Corina Jansen)代表は、この額は十分ではないと述べている。SoDMのデヨング氏の報告書によると、もし現在のペースでガス採取が続けば、今後1年間にM4.5以上の地震が発生する確率は50分の1だという。
■政府にとっては「金のなる木」
「恐怖だけではありません。政府が耳を貸さないという、不安と怒りがあります」。同地域の村、ウスウルト(Usquert)に住むMarijke Bronskemaさんはこう語る。Bronskemaさんが持つ1階建て住宅では、ほぼ全ての窓やドア枠が長さ15センチほどの多数のひび割れでもろくなっている。
オランダ政府は2011年、財源の8%に当たる120億ユーロ(約1兆4000億円)を天然ガスによって確保した。これがなければ、同年の財政は、金融危機のただ中にあるキプロスとほぼ同じ約6.2%の赤字となっていた。
ユーロ圏の経済危機に直面するオランダ政府にとって、首都アムステルダム(Amsterdam)や政治の中心都市ハーグ(Hague)から遠く離れた北部が被る被害や住民の怒りは、さほど重要ではないと地元住民たちは感じている。「ここは政府にとって金のなる木なんです」(住民のMarijke Bronskemaさん)
デヨング氏は報告書の中で、「大地震を防ぐために一刻も早く」ガス採取量を減らすよう政府に提案しているが、ヘンク・カンプ(Henk Kamp)経済相はこれを「経済面からみて無責任」な意見であるとして即座に切り捨てている。(c)AFP/Maude BRULARD
オランダ最北端からわずか数キロメートル離れたミッデルストゥム(Middelstum)に住むヤン・ボス(Jan Bos)さんとマルタ(Martha Bos)さん夫妻の家畜小屋では、壁に開いた長さ1メートル、幅5センチメートルの割れ目から、凍り付くような隙間風が吹き、冷たい日の光が差し込んでいる。また夫婦が住む20世紀初頭に建てられた家屋には、およそ15か所のひび割れがあり、玄関の床の一部は約7センチ沈下している。
48歳のマルタさんは「ここには25年も住んできましたが、ここ5年間で地震が頻繁に起こるようになりました」とAFPに語った。「引っ越したくはありません。ここで生活を築いてきました。でも、いつか大きな地震が起こるのが怖いのです」
夫婦の家は、オランダ北部フローニンゲン(Groningen)州にある欧州連合(EU)域内で最大のガス田の上に立っている。米エネルギー省エネルギー情報局(Energy Information Administration、EIA)によると、世界第10位の天然ガス産出国であるオランダは、このガス田から全産出量の3分の2を採取している。
同地域では今年2月だけで、マグニチュード(M)2を超える規模の地震が4回起きている。専門家によると、比較的小さな規模の地震でも、震源の深さがわずか3キロほどのため、震度は大きくなるという。
これらの地震は、大規模なガス採取によって地下に生まれる巨大な空洞が原因で「自然に」起こるものだが、同国の鉱業を監視する公的機関「SoDM」のヤン・デヨング(Jan de Jong)監査官が今年発表した報告書によると、オランダがガス生産量を年間500億立方メートル以上に倍増した2000年以降、地震発生頻度はますます増えているという。SoDMの統計によると、1991年~2000年には110回の地震が発生したが、00年~13年の間には500回以上に増加した。
石油大手の英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)と米エクソンモービル(Exxon Mobil)の合弁会社で、同地域のガス採取を行うオランダ石油会社(NAM)は、地震と採取作業の関連性を認めており、1億ユーロ(約120億円)の補償金の支払いを申し出ている。
だが1000人のメンバーからなる住民団体「Groninger Bodem Beweging(フローニンゲン大地運動)」のコリーナ・ヤンセン(Corina Jansen)代表は、この額は十分ではないと述べている。SoDMのデヨング氏の報告書によると、もし現在のペースでガス採取が続けば、今後1年間にM4.5以上の地震が発生する確率は50分の1だという。
■政府にとっては「金のなる木」
「恐怖だけではありません。政府が耳を貸さないという、不安と怒りがあります」。同地域の村、ウスウルト(Usquert)に住むMarijke Bronskemaさんはこう語る。Bronskemaさんが持つ1階建て住宅では、ほぼ全ての窓やドア枠が長さ15センチほどの多数のひび割れでもろくなっている。
オランダ政府は2011年、財源の8%に当たる120億ユーロ(約1兆4000億円)を天然ガスによって確保した。これがなければ、同年の財政は、金融危機のただ中にあるキプロスとほぼ同じ約6.2%の赤字となっていた。
ユーロ圏の経済危機に直面するオランダ政府にとって、首都アムステルダム(Amsterdam)や政治の中心都市ハーグ(Hague)から遠く離れた北部が被る被害や住民の怒りは、さほど重要ではないと地元住民たちは感じている。「ここは政府にとって金のなる木なんです」(住民のMarijke Bronskemaさん)
デヨング氏は報告書の中で、「大地震を防ぐために一刻も早く」ガス採取量を減らすよう政府に提案しているが、ヘンク・カンプ(Henk Kamp)経済相はこれを「経済面からみて無責任」な意見であるとして即座に切り捨てている。(c)AFP/Maude BRULARD