【3月29日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の最高指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者を殺害したのは、いったい誰なのか。2011年5月の米海軍特殊部隊「シールズ(SEALs)」の作戦をめぐり、1人のシールズ元隊員が2月、「自分が引き金を引いた」と米誌に告白した。ところが27日、この元隊員の主張とは異なる証言が明らかになり、波紋が広がっている。

 米男性誌エスクァイア(Esquire)は2月、ビンラディン容疑者が潜伏していたパキスタン北部アボタバード(Abbottabad)の隠れ家を急襲したシールズの作戦に参加したという元隊員の詳細なインタビューを、実名を伏せて掲載した。記事の中で「ザ・シューター(銃撃者)」の仮名で呼ばれるこの元隊員は、ビンラディン容疑者を射殺したのは自分だと主張。隠れ家の3階にあったビンラディン容疑者の寝室には、単独で突入したと語った。

 しかし、アルカイダに詳しい米CNNテレビの国家安全保障問題アナリスト、ピーター・バーゲン(Peter Bergen)氏はこのほど、この元隊員の証言は全くの捏造(ねつぞう)だと切り捨てた。

 バーゲン氏は急襲作戦に参加した精鋭部隊「チーム6」(隊員23人)のメンバーにインタビューしたが、この隊員は、最初に隠れ家の3階に駆け上がったのは3人の隊員だったと証言したという。この3人は、「ザ・シューター」とリーダー役の「ポイントマン」、そして「マーク・オーウェン(Mark Owen)」のペンネームで同作戦の手記「No Easy Day: The Firsthand Account Of The Mission That Killed Osama Bin Laden(困難な日:ウサマ・ビンラディン殺害作戦 当事者の証言)」を出版したマット・ビソネット(Matt Bissonette)氏だった。

 バーゲン氏によると、階段を駆け上がりざま、寝室のドアから顔を出したビンラディン容疑者を最初に撃ち、重傷を負わせたのは「ポイントマン」だった。

   「ポイントマン」はそのまま寝室内に突入し、中にいた女性2人に直行して2人を抱きかかえた。自爆ベストを着用している恐れがあったためで、自分の体で爆発の衝撃を和らげようとしたのだという。そこへ、さらに2人の隊員が室内に入り、負傷し倒れていたビンラディン容疑者の胸を撃って同容疑者を射殺したという。

 エスクァイア誌のインタビュー記事を読んだ「チーム6」のメンバーらは怒り心頭に発しているという。現在、隊員らはビンラディン容疑者の殺害作戦については、相手が誰であれ語ることを厳重に口止めされている。

 また報道によれば、エスクァイア誌のインタビューに応じた「ザ・シューター」は、シールズの本拠地バージニア(Virginia)州バージニアビーチ(Virginia Beach)のバーで、ビンラディン容疑者の殺害作戦における自分の役割について吹聴して回ったため、チーム内で爪はじきにされたという。(c)AFP