【2月7日 AFP】風呂やコーヒー、スイーツなどで世界的に名高いトルコで、新たな名物が誕生しつつある──ひげだ。

 口ひげはトルコや中東地域で男らしさの象徴とされている。その結果、生まれながらに毛の薄い人を中心に、トルコのクリニックでひげの増毛移植を行う人が増えている。

 トルコでは重大な関心事項である、ひげ。「ひげのない男はバルコニーのない家のようなもの」ということわざまで存在する。そしてひげ形には、政治的な意味が伴う。

 イスタンブール(Istanbul)の仏アナトリア学研究所(French Institute of Anatolian Studies)の人類学者、ブノワ・フリシュ(Benoit Fliche)氏は「スターリン(Stalin)のようなふさふさしたひげは左翼、あるいはクルド人の特権とみなされることが多い」と語る。

 また「レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相のようなきちんとしたひげは、宗教的で保守的な意味合いになる」「そして口の両側に牙のようにひげが垂れ下がると、それは極右の印だ」と続けた。

 クリニックなどのひげ増毛移植ができる場所は、イスタンブール市内だけでおよそ250か所ほどあり大激戦区となっている。これらの多くは、旅行代理店と提携して増毛移植をセットにしたツアーを提供している。

 ツアーの価格は2000ユーロ(約25万円)から。同価格帯の欧米ツアーよりも多くのサービスを詰め込んでいる。

 トルコ国内への観光客は増加傾向にあり、2012年の観光客数は推計で3500万人を越えた。その後押しを受けて、トルコのひげ増毛産業も大盛況だ。

「毎週、50~60人の髪の増毛移植患者が来院し、ひげの増毛移植患者は5~6人ほど」とイスタンブール・ヘア・センターの医師は語った。(c)AFP/Philippe Alfroy