【2月4日 AFP】米海軍の特殊部隊「シールズ(SEALs)」の元隊員で米史上最強の狙撃手と称賛されたクリス・カイル(Chris Kyle)さん(38)が2日、テキサス(Texas)州の射撃場でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患うイラク帰還元米兵の男に撃たれて死亡した。元米兵は2件の殺人容疑で逮捕された。

 イーラス(Erath)郡保安官事務所の3日の発表によると、カイルさんは友人とともに、イラク従軍経験のある元海兵隊員のエディー・ルース(Eddie Routh)容疑者(25)を伴ってテキサス州グレンローズ(Glen Rose)の射撃場を訪れていた。ルース容疑者はPTSDを発症していたとみられ、カイルさんが立ち上げに尽力したPTSDに苦しむ米帰還兵の支援団体「FITCO Cares Foundation)」に同容疑者の母親が支援を要請したようだという。

 これより先、米テレビABC系列のダラス(Dallas)のテレビ局WFAA-TVは、カイルさんと知人がグレンローズの射撃場でPTSDの元兵士の手助けをしていた時に撃たれて死亡したと伝えていた。

■「悪魔」と恐れられた最強の狙撃手

 カイルさんは1999~2009年の間、シールズの一員としてイラクに4回派遣され、イラクの武装勢力の戦闘員150人以上を殺害した。退役後は、退役兵たちの支援活動に尽力していたという。

 イラクのラマディ(Ramadi)やファルージャ(Fallujah)での戦闘体験を記した回想録「ネイビー・シールズ最強の狙撃手(American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in US Military History)」はベストセラーとなった。著書によれば、カイルさんの正確な狙撃で大打撃を受けた国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系列の武装組織幹部は当時、カイルさんのことを「悪魔」と呼んで懸賞金をかけていたという。

 また、1年前の地元紙とのインタビューでカイルさんは自身について、兵士になるために生まれてきた男だと評し、次のように語っていた。「子供のころ夢に描いていた将来は、2つだけだ。1つはカウボーイ、もう1つは軍人になること。とても強い愛国心を抱いて育ったんだ」(c)AFP