記者はもう要らない?データから記事を自動作成、米報道の最前線
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【7月13日 AFP】米ジャーナリズム界にさっそうと現れたその「新人記者」は、コーヒーブレークも取らず、猛烈なスピードでひたすら記事を量産するが、福利厚生は適用されない。
その正体は、コンピューター・アルゴリズム。企業の業績報告書やスポーツの試合結果といった膨大な量の生データから、必要な情報だけを抽出し、文章として読める形に整えるのだ。米国の新聞紙面やニュースウェブサイトで今、こうしたアルゴリズムが生み出す記事がじわじわと数を増している。
「基本的で定型の記事ならば、何にでも使える」と、メディア関連リサーチ会社アウトセル(Outsell)のアナリスト、ケン・ドクター(Ken Doctor)氏は語る。厳しい経済情勢下で圧迫を受けるメディア企業にとって、ニュース作成の一部を自動化するこの手法は「ジャーナリズムにおけるコスト配分の再構築に直に訴える」という。
アリゾナ州立大学(Arizona State Universit)のスティーブン・ドイグ(Stephen Doig)教授(ジャーナリズム)も、コンピューターによる「記事執筆」は当然の新たなステップだと述べる。「その手の記事をこれまで書いていた記者が、何かもっと興味深いことのために時間を割けるようになるのであれば、コンピューターに執筆を『外注』することに対する哲学的な異論はない」
■同じデータでも読者に合わせコンテンツ一変
自動生成したコンテンツを提供するニュース会社オートメーテッド・インサイツ(Automated Insights)のスコット・フレデリック(Scott Frederick)最高執行責任者(COO)は、これを「次世代のコンテンツ生成」と呼ぶ。
2007年に大きなスポーツイベントの試合データからニュースを制作する事業を立ち上げた同社は、現在ではスポーツ関連組織・団体に記事を販売する他、不動産ニュースにも手を広げている。フレデリック氏は「今後1~2年のうちに、報道業界はどこの社も何らかの自動化戦略が必要になるだろう」と予測している。
同社の作成するコンテンツの特徴は、各地のローカル紙の論調に似せて、同じデータソースから読者の好みや地域別に記事を書き変えている点だ。
例えば、2月に行われた11NFL第46回スーパーボウル(Super Bowl XLVI)。ニューヨーク・ジャイアンツ(New York Giants)のファン向けの配信は、「21-17でペイトリオッツを下した勝利を切り開いたアキーム・ニックス(Hakeem Nicks)にとって最高の夜。この勝利で第46回スーパーボウルの王者はニューヨークに」というものだった。一方、対するニューイングランド・ペイトリオッツ(New England Patriots)ファン向け配信では、「普段の力を出し切れなかったトム・ブレイディ(Tom Brady)。ペイトリオッツ、ホームでの21-17の敗戦。ニューイングランド、チャンピオンリングに1歩及ばず」となっていた。
フレデリック氏は指摘する。「データは、コンテンツという木を育てる種となる。生データだけから1本の記事全体を作れれば、テクノロジー的には大きな成果だ」
■3分の2はエンジニアリング、3分の1がジャーナリズム
自動生成コンテンツ会社ナレーティブ・サイエンス(Narrative Science)のクリスチャン・ハモンド(Kristian Hammond)最高技術責任者(CTO)は、コンピューターによるコンテンツ制作に10年以上関わってきた。2010年創業の同社の顧客は現在、米経済誌フォーブス(Forbes)など40社に及ぶ。記事のほか、社内レポート用に表計算ソフトなどのデータの文書化を依頼している企業もある。ハモンド氏は「我々がやっていることの3分の2はエンジニアリング。残り3分の1がジャーナリズムだ」と表現する。
自動生成された記事には、編集者が手を入れる場合もあるが、完成したものからそのまま自動で配信する場合もある。これは顧客の好みにもよるが、単に記事量が膨大すぎて全てに目を通せないからでもある。前年には米野球リトルリーグの試合に関する記事だけで37万本を作成した。
ただ、選手の負傷や天候の影響など、コンピューターでは拾えない情報もある。「データに載っていないものは反映されない。その欠点は十分意識しているが、ニュースになる出来事の多くはデータに基づいている」とハモンド氏。今のところ、それが問題になったことはないという。
■人間とコンピューターの「記者コンビ」で効率化
米紙シカゴ・トリビューン(Chicago Tribune)などと提携しているジャーナティック(Journatic)では、米国内外の「人間の」編集者による作業とコンピューター・アルゴリズムを組み合わせて「超ローカル」なニュース記事を作っている。
「ニュース制作の手法は半世紀もの間、代わり映えしなかった」と指摘するブライアン・ティンポーン(Brian Timpone)最高責任者は、「テクノロジーを活用すれば、もっとたくさんのローカルニュースを集められるし、記者を分散させることも可能になる」と述べ、テクノロジーと人間との連携の効果を強調した。
「アルゴリズム(だけ)が重要なのではない。アルゴリズムが役立つのはデータに構造があるときに限られる。すべてを自動化する方法はないのだ」 (c)AFP/Rob Lever
その正体は、コンピューター・アルゴリズム。企業の業績報告書やスポーツの試合結果といった膨大な量の生データから、必要な情報だけを抽出し、文章として読める形に整えるのだ。米国の新聞紙面やニュースウェブサイトで今、こうしたアルゴリズムが生み出す記事がじわじわと数を増している。
「基本的で定型の記事ならば、何にでも使える」と、メディア関連リサーチ会社アウトセル(Outsell)のアナリスト、ケン・ドクター(Ken Doctor)氏は語る。厳しい経済情勢下で圧迫を受けるメディア企業にとって、ニュース作成の一部を自動化するこの手法は「ジャーナリズムにおけるコスト配分の再構築に直に訴える」という。
アリゾナ州立大学(Arizona State Universit)のスティーブン・ドイグ(Stephen Doig)教授(ジャーナリズム)も、コンピューターによる「記事執筆」は当然の新たなステップだと述べる。「その手の記事をこれまで書いていた記者が、何かもっと興味深いことのために時間を割けるようになるのであれば、コンピューターに執筆を『外注』することに対する哲学的な異論はない」
■同じデータでも読者に合わせコンテンツ一変
自動生成したコンテンツを提供するニュース会社オートメーテッド・インサイツ(Automated Insights)のスコット・フレデリック(Scott Frederick)最高執行責任者(COO)は、これを「次世代のコンテンツ生成」と呼ぶ。
2007年に大きなスポーツイベントの試合データからニュースを制作する事業を立ち上げた同社は、現在ではスポーツ関連組織・団体に記事を販売する他、不動産ニュースにも手を広げている。フレデリック氏は「今後1~2年のうちに、報道業界はどこの社も何らかの自動化戦略が必要になるだろう」と予測している。
同社の作成するコンテンツの特徴は、各地のローカル紙の論調に似せて、同じデータソースから読者の好みや地域別に記事を書き変えている点だ。
例えば、2月に行われた11NFL第46回スーパーボウル(Super Bowl XLVI)。ニューヨーク・ジャイアンツ(New York Giants)のファン向けの配信は、「21-17でペイトリオッツを下した勝利を切り開いたアキーム・ニックス(Hakeem Nicks)にとって最高の夜。この勝利で第46回スーパーボウルの王者はニューヨークに」というものだった。一方、対するニューイングランド・ペイトリオッツ(New England Patriots)ファン向け配信では、「普段の力を出し切れなかったトム・ブレイディ(Tom Brady)。ペイトリオッツ、ホームでの21-17の敗戦。ニューイングランド、チャンピオンリングに1歩及ばず」となっていた。
フレデリック氏は指摘する。「データは、コンテンツという木を育てる種となる。生データだけから1本の記事全体を作れれば、テクノロジー的には大きな成果だ」
■3分の2はエンジニアリング、3分の1がジャーナリズム
自動生成コンテンツ会社ナレーティブ・サイエンス(Narrative Science)のクリスチャン・ハモンド(Kristian Hammond)最高技術責任者(CTO)は、コンピューターによるコンテンツ制作に10年以上関わってきた。2010年創業の同社の顧客は現在、米経済誌フォーブス(Forbes)など40社に及ぶ。記事のほか、社内レポート用に表計算ソフトなどのデータの文書化を依頼している企業もある。ハモンド氏は「我々がやっていることの3分の2はエンジニアリング。残り3分の1がジャーナリズムだ」と表現する。
自動生成された記事には、編集者が手を入れる場合もあるが、完成したものからそのまま自動で配信する場合もある。これは顧客の好みにもよるが、単に記事量が膨大すぎて全てに目を通せないからでもある。前年には米野球リトルリーグの試合に関する記事だけで37万本を作成した。
ただ、選手の負傷や天候の影響など、コンピューターでは拾えない情報もある。「データに載っていないものは反映されない。その欠点は十分意識しているが、ニュースになる出来事の多くはデータに基づいている」とハモンド氏。今のところ、それが問題になったことはないという。
■人間とコンピューターの「記者コンビ」で効率化
米紙シカゴ・トリビューン(Chicago Tribune)などと提携しているジャーナティック(Journatic)では、米国内外の「人間の」編集者による作業とコンピューター・アルゴリズムを組み合わせて「超ローカル」なニュース記事を作っている。
「ニュース制作の手法は半世紀もの間、代わり映えしなかった」と指摘するブライアン・ティンポーン(Brian Timpone)最高責任者は、「テクノロジーを活用すれば、もっとたくさんのローカルニュースを集められるし、記者を分散させることも可能になる」と述べ、テクノロジーと人間との連携の効果を強調した。
「アルゴリズム(だけ)が重要なのではない。アルゴリズムが役立つのはデータに構造があるときに限られる。すべてを自動化する方法はないのだ」 (c)AFP/Rob Lever