【7月6日 AFP】アジアでは子どもたちの塾や家庭教師に莫大な費用を掛ける傾向が強まっているが、その教育効果には疑いの余地があるとする報告書を、アジア開発銀行(Asian Development BankADB)が4日発表した。

 香港大学(University of Hong Kong)比較教育研究センター(Comparative Education Research Centre)が実施した調査結果によると、わが子の人生に最良のスタートを切らせたい親たちが子どもを塾に通わせたり家庭教師をつけたりする傾向は、アジアでは富裕国のみならず、比較的貧しい国々でも拡大しつつある。

 特に東アジアでは広く普及しており、韓国では小学生のほぼ10人に1人がこうした「影の教育(shadow education)」を受け、その費用は政府の教育予算の8割にも相当すると報告書は推計している。

 一方、日本では2010年に120億ドル(約9560億円)が、シンガポールでも2008年実績で6億8000万ドル(約540億円)が、それぞれ塾・家庭教師などの学校外学習に費やされたという。

 ただし報告書は、子どもの学校外学習によって、バランスの取れた教育に重要なスポーツなどの別の活動に充てる時間が減ったり、裕福な家庭とそうでない家庭の間に教育格差が生まれて社会的対立の元となる恐れがあると指摘。

 さらに、塾や家庭教師による教育は生徒・教師のやる気や能力に大きく依存しているにもかかわらず、ほとんどの国では訓練なしで塾講師や家庭教師になれるため、人気とは裏腹に教育効果はまちまちだとして、政府が業界を監督・規制したり、教育システムそのものを見直す必要があると述べている。(c)AFP