【5月21日 AFP】ここ数十年の海面上昇は、地下水が大量にくみ上げられたことが一因になっているという論文が、東京大学(University of Tokyo)の研究チームにより20日の英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)に発表された。

 地球の海水面は1961年から2003年にかけて、年間1.8ミリメートルのペースで上昇したが、そのどこまでが温暖化に起因するのかは大きな疑問となっていた。

 ノーベル賞を受賞した国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)が2007年に発表した報告書では、海水面上昇のうち年間1.1ミリ分は海水が温められて起こる熱膨張とグリーンランドや南極などの氷床や氷河の融解によるものとしていた。

 残りの0.7ミリについては多くの科学者にとって謎とされ、データが間違っているか、まだ知られていない原因がある可能性が考えられていた。

 コンピュータモデルを用いて研究した東大のYadu Pokhrel氏らは論文の中で、その答えは、人類が開発のために地下帯水層や川、湖から水を補充することなくくみ上げていることにあると述べた。論文によると、くみ上げられた水は土壌からの蒸発や川を通じて最終的に海にたどり着く。

 研究チームは論文の中で、「非持続的な地下水利用、人工貯水池への貯水、気候の変動に伴う陸域貯水量の変化や閉鎖水域からの水の消失など合わせて1961年から2003 年の間に平均0.77mm/年、観測された海水面上昇の42%に寄与していることがわかった」と結論付けている。この中で非持続的な地下水利用が最も大きな要因だったという。

 温暖化が海洋にもたらす影響についてはまだ解明されていないことが多く、海面上昇もその1つだ。海面上昇は沿岸部に住む数億人にとって重要な問題であり、わずかな上昇でも毎年続けば、高潮や、帯水層や沿岸の土地への塩水の流入などの被害を受けやすい地域にいずれ劇的な影響を及ぼす恐れがある。(c)AFP