【5月15日 AFP】東京電力(TEPCO)福島第1原発の事故で大きな打撃を受けた日本企業は、国内の全原発が停止した今、大幅な節電が求められる長い夏を迎えようとしている。

 気温が上がればアイスクリームなどの売れ行きが伸びるので、通常ならば大手製菓・江崎グリコ(Ezaki Glico)にとって猛暑は良いニュースだ。しかし、懸念されている電力不足が現実のものとなれば、需要増への対応は難しくなるかもしれない。

 猛暑の中、政府から大幅な消費電力削減を求められれば同社のアイスクリーム事業は深刻な打撃を受けるため、需要がピークに達する前にアイスクリームを製造しておかなければならないと同社の広報担当者は語る。

 国内の全原発が停止してから2週間目に入った。日本は電力の需給ギャップを埋めるのに苦心している。政府が決めた関西電力(Kansai Electric)管内の節電目標の1つとして、20%という数字が報じられている。しかし昨夏、関西の企業や工場が節電を行った際には、約15%の節電でも多くの企業にとって困難なことが明らかになった。

■海外工場への生産移管も検討

 関西電力管内の大阪に本社がある大手クレヨンメーカー、サクラクレパス(Sakura Color Products)もそうした1社だった。同社は昨年、照明を最低限にし、半数のコンピューターとエレベーターを止めたが、今年は計画停電の前に生産量を増やすなどの対応を考えている。一部商品の生産を上海(Shanghai)の工場に移すことさえ検討しているという。同社の広報担当者は、そこまでしなければ消費電力の20%削減は難しいと感じていると述べた。

 資源に乏しい日本は電力の3分の1を原発に依存してきたが、福島第1原発の事故を受け、国民の間で反原発感情が高まった。関西電力が4月に発表した2012年3月期の連結決算で、純損益は過去最悪の約2423億円の赤字だった。運転停止した原発に代わり、使っていなかった火力発電所の稼働を増やしたことで燃料費が増加したためだ。

 一方、停止した原発を再稼働させるには今やストレステスト(安全評価)に合格した上でさらに地元の合意が必要で、これが最後の大きなハードルとなっている。野田政権は4月、ストレステストに合格した関西電力大飯原発(福井県)に再稼働を要請した。しかし監督機関は今も原発近くに住む住民を説得できていない。

 北海道や九州でも、エアコン使用が集中する夏場には十分な電力を供給できないのではないかと心配されている。報道によれば、これらの地方について政府は10%程度の節電を求めることを検討している。

 電力不足への懸念が全国に広がる中、日本経済団体連合会(経団連、Keidanren)の米倉弘昌(Hiromasa Yonekura)会長は国内50基の原子炉が1つも再稼働しなければ、日本経済は崩壊すると繰り返し警告してきた。

 大和総研(Daiwa Institute of Research)のエコノミスト、長内智(Satoshi Osanai)氏は、昨夏の電力不足を辛うじて乗り越えたメーカーは、今年も昨年と同程度か、あるいはそれ以上に厳しい事態に直面する恐れがあるとみている。昨年は平日の代わりに週末に操業したり、電力使用のピーク時を避けて操業したりすることでメーカーは生産レベルを維持しようとしたが、20%もの使用電力削減となれば、国外に生産拠点を移すメーカーが増えかねないという。(c)AFP/Harumi Ozawa