英のタクシー運転手、人類3000年ぶりのミイラに
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【10月19日 AFP】英国で1月に亡くなった60代の男性が、古代エジプトのファラオ(王)たち以来、この3000年間で初めて同じ方法でミイラとなった。
この男性は1月に肺がんで亡くなったイングランド南西部トーキー(Torquay)のタクシー運転手、アラン・ビリス(Alan Billis)さん(当時61歳)。生前、英テレビ局チャンネル4(Channel 4)が企画した科学ドキュメンタリー番組の「ミイラ化実験」に献体する意思を表明していた。
このドキュメンタリーの中でビリスさんは、「人びとは長年、科学のために献体してきた。献体する人がいなかったら何も発見されない。それに献体して成果が得られなかったとしても、世界が終わるわけじゃないだろう?わたしにはもはや、どちらでもよいことになっているはずだ。死んだら感じないんだからね。それでも、すごく面白いと思うんだ」と語っている。
このドキュメンタリーによると、ビリスさんの死後、遺体は法医学者のピーター・バネジス(Peter Vanezis)教授率いるチームによって、心臓と脳を除くすべての臓器を取り除かれ、特別な塩水の中に数か月間、漬けられた。その後、イングランド北部シェフィールド(Sheffield)にある法医学センターに設けられた特別室で乾燥され、光や虫で四肢が傷つかないように亜麻の包帯で巻いてさらに乾燥された。
■エジプト第18王朝の手法でミイラ化
ビリスさんの遺体は、ミイラ化について約20年にわたって研究しているヨーク大学(York University)の化学者で研究フェローのスティーブン・バックリー(Stephen Buckley)教授が開発した方法でミイラ化された。
バックリー教授は、紀元前1323年に亡くなったツタンカーメン(Tutankhamun)王のミイラを含む、古代エジプト第18王朝を主な研究対象としている。最も保存状態の良いミイラが作られた時代だ。バックリー教授の重要な発見のひとつは、通説とは異なり、ミイラの鼻孔から脳を除去することは行われていなかったという点だ。
包帯を巻かれた後、タクシー運転手ビリスさんの遺体の元に妻のジャン(Jan)さんが別れを告げに訪れ、生前の写真や孫が描いた絵などを置いた。さらに3か月が経過して、ミイラ化が完了。多くの専門家から成功だという称賛が寄せられている。
バネジス教授が「皮膚自体がすっかり革のようになっている。完全にミイラ化したしるしだ」と話すと、バックリー教授は「過去3000年の中で、最も素晴らしいミイラが生まれた(古代エジプト)第18王朝でも最上のミイラと同じように見えるようになる道を、彼は歩み始めたところだ」と付け加えた。
この番組は英国で10月24日に放送される。(c)AFP