【6月23日 AFP】米紙ワシントン・ポスト(The Washington Post)の記者として2007年のバージニア工科大(Virginia Tech)銃乱射事件の記事でピュリツァー賞(Pulitzer Prize)を受賞したホセ・アントニオ・バルガス(Jose Antonio Vargas)氏(30)が、自らを不法移民だと告白する記事を22日の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載した。

 フィリピン出身のバルガス氏は、4300文字の記事の中で、これまでの人生を次のように振り返った。

 1993年、12歳の時に、母親から米サンフランシスコ(San Francisco)にいる祖父母と一緒に暮らした方が良い暮らしができると言われ、米国行きの飛行機に乗せられた。自分が不法滞在者であることを知ったのは16歳の時。運転免許証を受け取りに窓口に行くと、手続きのため提出した書類は偽造だったと言われ、「2度とここに来るな」と追い返された。

   「そのとき、米国人ではないのではないかと誰かの疑いを招くような真似は絶対にしないと心に決めたのです」

 その後の14年間は、高校、大学を卒業し、新聞記者としてのキャリアを積んできた。米国の有名人たちにも取材を行ってきた。ワシントン・ポストを09年に退職した後、米ニュースサイト「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」でも記者を務めた。

   「表向きは、アメリカンドリームを体現した良い人生を送っています。でも実際は、いまだに不法移民なのです」

   「つまり私は、もう1つの現実も生きているのです。身元がばれないかと常にびくびくして、他人をめったに信じない、といったことです。自分に最も近しい人物でさえ信じない癖がついたのです」

  不法移民である事実を、渡米から20年近くたった今になって告白したきっかけについてバルガス氏は、不法移民の学生に在留資格を与える「ドリーム法案(DREAM Act)」への支持を集めたいからだと語った。「それに、自分が何者かという問いから逃げ回ることに疲れ果てたんです。もう逃げたくはありません」

   「この告白がどのような結果を招くのか、わたしにも分かりません」と語るバルガス氏は、今後について弁護士に相談しているところだという。(c)AFP