「ピエール・カルダン」ブランド売却を希望、中国の可能性も
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【6月3日 AFP】メゾン設立60周年を迎え、現在もファッション業界で偉大な活躍を見せているピエール・カルダン(Pierre Cardin)が10億ユーロ(約1170億円)という高額でのブランド売却を希望している。
カルダンは、欧州ブランドとして初めて日本や中国、インドといったアジア地域に進出。ライセンス・ビジネスの先駆者でもあり、カルダンの名が付けられた商品はいまや何百にも上る。その分野も、シャツから家具、香水までと幅広く、改革的と言えるほどの商業戦略を繰り広げてきた。
■2億ユーロが妥当?
カルダンは米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal、WSJ)に対し、売却の意思を明かし、「今後数年で私自身は引退するが、ビジネス自体は続いていく必要がある」とコメント。売却する場合も、カルダンはクリエイティブ・ディレクターとしてブランドに留まる予定だ。「そうすることで、ブランドの評価は保たれるでしょう」とカルダン。
しかし、金融関係者は、10億ユーロという売却額は「高すぎる」と厳しい意見。売却価格は、カルダンの希望価格のわずか五分の一にあたる2億ユーロ(約235億円)が妥当、と考える。
英投資顧問会社サビニー・パートナーズ(Savigny Partners)のPierre Mallevaysシニア・マネージャーは「ピエール・カルダンのようなブランドの価値は普通のブランドのように上昇することはありません。なぜならほとんどをライセンス収入に頼っているからです」と語る。パリの評論家も「カルダンは少し無防備過ぎる。ライセンス展開をやりすぎたため、無形資産が浪費されてしまった」とコメントする。
■中国の可能性も
ブランドの可能性は、高級品の需要が高まる中国にあるのかもしれない。カルダンは先月中旬に、中国・天津(Tianjin)で盛大なファッションショーを開催。現地で開かれた会見で、「ブランドに対し、中国を含むいくつかの買い手から打診があった」とコメント。売却先は中国企業か、という問いかけに対しては「中国――。なぜ駄目なのかい?」と含みのある答えを返した。
チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ(China Market Research Group)のショーン・レイン(Shaun Rein)マネジング・ディレクターは、30年以上前から中国でのブランド展開に力を注いできたカルダンを「中国の消費者の多くに、『ラグジュアリーとは何か』という定義を教えた」と評価。さらに、「現在、中国の投資家は資金が潤沢にある。そこで、西洋のブランドを買収しようと試みているのです。ゼロからブランドを立ち上げるのは難しすぎますから」と語る。
カルダン側は具体的な中国での売り上げを明かさなかったが、年間の増収率は約20%を記録しているという。(c)AFP