結婚生活はわずか数日間、花婿に捨てられる花嫁たち インド
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【12月30日 AFP】額縁入りの結婚写真と、ハネムーンで使うはずだった列車の乗車券2枚。これが、コール(Kaur)さん(22)が2年前に結婚したことの唯一の証しだ。
彼女の夫は、インド・パンジャブ(Punjab)州ビルガ(Bilga)村で盛大な結婚式が行われた1週間後に、カナダ・モントリオール(Montreal)の自宅に1人で舞い戻った。ビザ取得のために必要な書類を送付するからと、新妻に言い残して。
だが、書類は待てど暮らせど届かなかった。コールさんの家族がようやく夫と連絡をつけたところ、彼は妻の存在を否定した。
「手紙を120通書き、電話を500回かけましたが無駄でした。彼はわたしも家族もだましたんです」と、コールさん。彼女の父親は贅(ぜい)を尽くした結婚式の費用を工面するため、農地約1万6000平方メートルを売却しなければならなかった。コールさんは現在、慢性的な抑うつに悩まされている。
■花婿に逃げられた花嫁は2万人以上
インドでは、在外インド人(NRI)が見合い結婚のためインドを訪れ、婚資を受け取ったあと花嫁を捨てて本国に戻るというケースが相次いでいる。
パンジャブ州の小政党、Lok Bhalai党によると、在外インド人の花婿に捨てられたとして刑事訴訟を起こした花嫁は2万2000人以上にのぼっている。同党のB. Ramoowalia党首は、過去10年間で、花嫁の要請により花婿1200人の居場所を突き止めた。
「彼らにとって、いちばん手軽にカネを稼げる方法が結婚です。彼らは婚資を手に入れるや、国からの脱出計画を練り始めます」とRamoowalia党首。
なお、花婿に逃げられたと明らかにすることは一族の恥、と考える女性が多いため、実際の被害者数は不明だという。
■海外生活を夢見る女性たちのジレンマ
インドでは1961年以降、婚資の授受が法律で禁じられているが、花嫁の両親が花婿の家族に現金、衣服、宝石類などを贈る古くからの風習は今なお健在だ。
在外インド人の親はたいてい、息子の嫁にインド人を希望するため、結婚シーズンともなると、カナダ、英国などから若いインド人たちが先祖の村を訪れて嫁探しをする光景が見られるようになる。
また、インドの若い女性の多くは、退屈な村の生活から抜け出して海外に移住することを夢見ている。
ただし結婚生活は、多くの場合、数日間しか続かない。いつしか「ホリデー・ブライド」と呼ばれるようになった不幸な花嫁たちは、再婚もできず、両親の負担となっていることへの罪悪感もある。
■帰国後もカネをせびる悪質なケースも
かくして、夫の改心という淡い期待にすがりつくわけだが、「決してそんなことは起こりません。花婿は、逮捕されたり、村人から殴打されたりすることを恐れて、二度と戻ってこないんです」と、自身も被害に遭ったナビン(Navin)さんは言う。
ナビンさんは2004年、英国系インド人と結婚式を挙げた。だが数日後、夫は、ヨーロッパ人のガールフレンドがいることを打ち明け、「彼女との同居を許してくれるならビザの取得に手を貸してあげてもいい」と言われた。
「断りましたよ。そして警察に被害届を出しました。でも彼は警察官に賄賂を払ってまんまと出国したんです」(ナビンさん)
本国に戻った花婿が、「お金がないので新妻を呼び寄せることができない」として、花嫁の家族にさらに多くの現金をせびるという悪質なケースも報告されている。
こうした女性たちを守るための法律の制定が必要とされている。だが、ナビンさんによると、花婿の親族が政党に多額の寄付をしている場合が多いこともあり、政治家は対応に及び腰だという。(c)AFP/Rupam Jain Nair