【11月8日 AFP】韓国・ソウル(Seoul)で今週開かれる20か国・地域(G20)首脳会議で同国を訪れるバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が、日米、米韓関係の双方を讃えるであろうことは明らかだ。だが、ワシントンのアジア政策通のなかには、オバマ政権が比重を日米から米韓関係に移し始めているとの見方が出ている。

 オバマ大統領は今年に入ってからの別々のコメントで、韓国をアジア太平洋地域の地域安全保障における「要」と表現する一方、日本については世界の安全保障における「礎の1つ」と評している。

 単なる学術用語的な違いにもみえるが、長年にわたって日本こそが米国のアジア戦略における「要」と自負してきた日本の政治家たちにとっては見逃せない点だ。

 オバマ政権の閣僚らと近い米シンクタンク「ヘリテージ財団(Heritage Foundation)」のブルース・クリンガー(Bruce Klingner)上級研究員は、オバマ大統領の「要」発言は、6月にカナダで行われたG20首脳会議で、韓国の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領と会った際に述べられたものであることから、ある程度、オバマ政権の方針が現れているとみる。

 李大統領は、米国を不動の同盟国と見なしており、北朝鮮政策や米軍の韓国駐留で繰り返し米国を批判した盧武鉉(ノ・ムヒョン、Roh Moo-Hyun)前政権から大きな転換だ。

 翻って日本の状況はといえば、前年の総選挙で自民党が敗れ、半世紀におよんだ同党の保守政治が終えんを迎え、沖縄にある米軍普天間飛行場(US Marine Corps Air Station FutenmaMCAS Futenma)の県外移設を公約に掲げた民主党政権が誕生した。

 日韓両国の新政権の対米姿勢を比較して、クリンガー研究員は「李明博政権には、より広く責任を負担しあう積極的な韓米関係に移行しようとの前向きな姿勢が、はっきりと見られる。これに対し、日本の民主党政権は、日米関係を重視せずに日中関係と同等レベルにおこうとしている」と説明した。

 6月に菅直人(Naoto Kan)氏が首相の座につき、尖閣諸島をめぐり日中が緊張関係に陥ってから、日米関係に改善の兆しは見えている。

 だが、それでも米国の対日、対韓姿勢の差は広がっているとの見方は減っていない。

 オバマ大統領の10日の訪韓を前に、米韓が自由貿易協定(FTA)の批准を目指していることも、その一例だ。

 最近の米韓接近について、外交政策分析研究所(Institute for Foreign Policy AnalysisIFPA)アジア太平洋研究所のウェストン・コニシ(Weston Konishi)副所長は、「韓国の李大統領は指導力を発揮し将来の構想を示しているが、日本政府からは(対米関係における)こうした推進力は感じられない」と評した。

 その一方で、米ボストン大学(Boston University)のウィリアム・グライムス(William Grimes)アジア研究センター所長は、米国は日本を軽視すべきではないと警鐘を鳴らす。

 グライムス所長は、官僚主導による地に足のついた日本の外交政策は国際社会で目立たないと指摘。韓国は日本や中国と差別化をはかり国際社会での地位を固めることに成功しているとしたうえで、国家規模や企業の国際的影響力などの観点から、韓国にも日本と同等の機会があるとは考えにくいと語った。「国際社会における日本の存在は大きい。ただ、その存在が目立たないだけだ」

(c)AFP/Shaun Tandon