【9月15日 AFP】国際監査法人プライスウォーターハウスクーパース(Pricewaterhouse CoopersPwC)は、経済危機やインターネットメディアの台頭で欧米の印刷メディアが苦戦を強いられる中、アジアの新聞各紙は好調を維持しているとした報告書を発表した。

 PwCの報告書『Global Entertainment and Media Outlook 2010-2014』によると、北米では新聞の主要な収入源である広告収入が2005年以降、47%も減少しているが、アジアでは2014年までは年3.1%の割合で増加し、273億ドル(約2兆3200億円)に達する見込みだという。

 新聞購読者数が世界一の日本をはじめとして、市民生活に新聞が浸透しているアジアでは、印刷メディアからオンラインニュースへの移行が比較的遅いペースで進行しているためとみられる。

■拡販競争で扇情的に

 数多くの中国語紙と英字紙があふれる香港(Hong Kong)では、各紙が読者の獲得をめぐってしのぎを削っている。

 過酷な販売競争が繰り広げられるなか、人気大衆紙「蘋果日報(Apple Daily)」は、猟奇的なニュースを積極的に報じたり、現場で取材する若い記者を増やしたりしている。同紙の鄭明仁(Cheng Ming-yan)編集長は「保守的な紙面ではなく、攻撃的な報道を目指している」と、その意図を語った。

 人口700万の香港では、成人の約80%が新聞を読んでいる。最大購読者数を誇る2大紙は、それぞれ120万の読者を持っている。

 香港の新聞読者について蘋果日報の鄭編集長は、「中国の人々は情報は新聞から得るものだと思っている。われわれの親たちが昔から、新聞に親しんできたからだ」と言う。

■静かに迫る衰退の危機

 だが、フリーペーパーの出現で、香港でも新聞の売り上げは減少しつつある。

 これに対抗するため、蘋果日報では注目を集めたニュースをCG技術を用いてアニメーション化している。最近では、男子プロゴルフのタイガー・ウッズ(Tiger Woods)選手の車をゴルフクラブを持った妻(当時)に追いかけるアニメーションが注目を集めた。「マンガを読んで育った世代には『絵』が必要なんだ」(鄭編集長)

 だが、ニュースのネット移行や動画化は、結局は新聞業界を衰退に追いやるものだと、香港大学(University of Hong Kong)でジャーナリズムを教える陳婉瑩(Chan Yuen-ying)氏はみている。「今のところ、アジアにおける印刷メディアの衰退のペースは遅く、新聞社のオーナーには時間は残されているが、扉は閉じられつつある。新聞メディアが楽観的でいられる理由は何もない」(c)AFP/Peter Brieger