【4月14日 AFP】オーストラリアのシドニー(Sydney)に、さまざまな病気に冒された標本を集めた「Museum of Human Disease(人間の病気博物館)」が開館した。

 シドニー郊外の緑あふれる閑静な大学構内にあるこの博物館はかつてニューサウスウエールズ大学(University of New South Wales)の医学生向けの資料館だった。ありとあらゆる病気が人体を蝕んでいくありさまを本物の遺体から集められた2000以上の標本が詳細に示している。

 喫煙者の黒ずんだ肺の向かい側に展示されているのはテニスボール大の壊死性潰瘍。そのそばのガラスケースには「痛風性膝関節炎」というラベルがついた変形した脚の標本が入っている。薄暗い背景に浮き上がる骨格標本は、2本の親指を立ててOKの意志を示すしぐさをしている。

 一方、甲状腺腫による「しこり」や、バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)で四肢の末梢小動脈に血栓が生じ脱疽をおこした脚部など、一般の見学者にはなじみの薄い病気についての展示も多い。

 同博物館の開館にあたっては困難も多かったと、学芸員のロバート・ランズダウン(Robert Lansdown)氏は認めるが、博物館は人びとに健康の重要性を学ぶ機会を提供する強力な場所となると、同氏は力説する。来館者は喫煙や脂肪分の多い食事の弊害を目の当たりにすることになるからだ。

「展示物の説明を読み、その人物が喫煙者だったとか、肥満だったと知るだけでも十分な効果がある」とランズダウン氏。「肌のしわやしみなど外面的な衰えに気を配る人は多いが、内臓の衰えを気にする人は少ない。だが、年齢とともに人間の内部も大きく変化していくことを知っておくべきだ。この博物館では望ましくない食生活や飲酒、運動不足がもたらす結果を目の当たりにすることができる」

 一方、ランズダウン氏は、展示されている標本は献体した故人に対する敬意をもって取り扱っており、決して興味本位の扇情的な展示ではないと強調した。(c)AFP/Neil Sands