【1月15日 AFP】(写真追加)ベルギー・ブリュッセル(Brussels)の欧州委員会(European Commission)本部では、チェコの議長国就任を記念して現代美術作品が展示されているが、ブルガリアは14日、この作品をただちに撤去するよう要請した。同国が「トルコ式」とも言うべき「旧式トイレ」で表現されているためだ。

Entropa」と名付けられた作品は12日、EU代表らに公開されたが、16平方メートルの巨大な「トイレ」を目にしたブルガリア代表らの間には困惑が広がった。一等書記官のBetina Joteva氏は「わが国にトイレが乗っかっているなんて、見るにたえない。これはブルガリアの顔ではありません」と怒り心頭。ブルガリア大使は早速、チェコのEU議長およびEUのハビエル・ソラナ(Javier Solana)共通外交・安全保障上級代表に、15日の一般公開までに作品を撤去するよう求める書簡を送った。

 一方、ブルガリアの首都ソフィア(Sofia)では、チェコの大使が外務省に呼ばれ、事情説明を求められた。

 作品を製作したチェコの彫刻家、デビッド・チェルニー(David Cerny)氏は、「これはアートであり、政治的な意図を含んだものではない。カタルシスとしてのユーモアだ。あなた自身を写す鏡でもある。深刻に受け止めないで欲しい」と語っている。

 なお、加盟27か国に合わせて欧州の27人のアーチストで共同製作したとEU本部に説明していたチェルニー氏は、13日、これがウソであることを明らかにした。さまざまな理由が重なって実現できず、チェコの少人数のグループで制作したのち、全部で27人になるように名前をでっちあげたという。

 同氏は謝罪はしたものの、「ウソがばれることはわかっていた。でも、欧州の人々がそれを知って笑えるかどうかも、見てみたかったんだ」と付け加えた。

 作品のポーランドの部分には、ゲイ・コミュニティーを象徴する虹の旗を立てるカトリック聖職者が描かれている。第二次大戦時に米軍が硫黄島に星条旗を立てたあの有名なシーンを模したものだ。

 オランダの部分は洪水で表現され、水面からはモスクの尖塔がかすかにのぞいている。

 イタリアの部分は、ボールを追う選手たちが描かれた巨大なサッカー場となっている。

 なお、ドイツと英国の部分には「カギ十字」が使用され、物議を呼んでいる。(c)AFP