【12月9日 AFP】イヌも不公平に扱われると単純な嫉妬(しっと)心を抱き、不機嫌になる――。ウィーン大学(University of Vienna)によるこうした研究が、8日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 科学者の間では、「不公平感」は社会的協調の発達のうえで重要な要素であり、つい最近まで、こうした感受性を持っているのは人間だけと考えられてきた。

 ところが、サルとチンパンジーを対象にしたいくつかの実験では、霊長類にも嫉妬の感情があることが明らかになっている。複数のサルに同じ仕事をさせてご褒美(餌)の内容に差をつけた場合、「内容の劣る」ご褒美をもらった方のサルは、仕事をすることも、その餌を食べることも拒否したという。

■「お手」で実験、サルとイヌの違い

 ウィーン大学の研究チームは、人との複雑かつ緻密な協調関係を築き、人の行動に高い共感を示すイヌにも、こうした嫉妬の感情が表れるのではないかと考え、実験を行った。実験では29匹のイヌを対象に、単独または隣に別のイヌがいる状態で「お手」を要求し、その反応を観察した。

 片方にご褒美をあげ、もう片方にはあげなかった場合、ご褒美をもらえなかった方はすぐに「お手」をやらなくなり、実験者からも顔をそらすようになったという。こうした結果を踏まえ、研究チームは「イヌは報酬の不公平な分配を気にする動物だ」と結論付けている。

 ただし、片方にソーセージ、もう片方にはパンをあげる実験では、パンを食べることを拒否するイヌがいなかったことから、ご褒美がもらえさえすればそれでよく、「質」は気にしていないようだと、研究チームはみている。(c)AFP