【9月13日 AFP】1億6000万年以上続いた恐竜時代だが、恐竜が地球で支配者になった理由は生理学的な優位性ではなく、単に幸運によるものだった可能性があるとする論文が11日、米科学誌「サイエンス(Science)」(9月12日号)で発表された。

 論文の共同著者の1人、米ニューヨーク(New York)のコロンビア大学(Columbia University)研究員Steve Brusatte氏は、「長い間、恐竜には出現してから最初の3000万年の間にほかの種より優位に立った、特別な何かがあるのではないかと考えられていたがそれは正しくなかった」と述べている。

 同氏はまた、「わたしたちの誰かが三畳紀にいたとして、次の1億3000万年間に世界を支配するのはどの種だと思うかと尋ねられたら、クルロタルシ類(crurotarsans)だと答えていただろう。クルロタルシ類は恐竜の競争相手でワニの祖先にあたる」と述べた。

 約2億年前の三畳紀末期、クルロタルシと恐竜は同じ資源を巡って争っていたとみられている。長期間にわたり繁栄した恐竜は、ほかの種よりも速く進化し環境に適応していったと考えられてきたが、今回の研究では当時世界を支配していたのはクルロタルシだったことが示された。

 研究では、64種の頭蓋(ずがい)骨の約500の特徴を調べたところ、クルロタルシのほうが大きさ、体形、餌、生態の多様性に富んでいた。三畳紀時代のクルロタルシは、現在のワニと比較して驚くほど種類が豊富で、二足歩行の肉食動物もいれば、肉食性で四足歩行のデイノスクス(Deinosuchus)などもいた。

 約2億年前、恐らくいん石の衝突が原因で急激に地球が温暖化し、クルロタルシは突如絶滅したが、恐竜はどういうわけか生き残った。競争相手が突然絶滅したため、恐竜は次の1億3500万年間にわたって地球の支配者となり、別の破壊的ないん石の衝突でその支配は幕を閉じた。

 Brusatte氏は「データ分析の結果、恐竜が特に優れていたとは言い難く、クルロタルシが大災厄に見舞われたとき、恐竜は幸運だっただけだ」とまとめている。

 論文の共同著者で英ブリストル大学(University of Bristol)の古生物学者Michael Benton氏によると、約2億年前のいん石の衝突で、なぜクルロタルシが絶滅し恐竜が生き残ったかについては、科学的な答えは出ていないという。

「多くの人はT型フォードより(フォードの乗用車)トーラス(Taurus)が優れているというのと同じ感覚で、古くから存在した生物よりも後に出現した生物の方が優れていると考えがちだが、恐竜が滅びた後に哺乳類が繁栄したのも単に偶然の産物かもしれない」 (Benton氏)(c)AFP