【8月24日 AFP】マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)元英首相の娘の新著の抜粋が24日の英日曜紙に掲載され、最近の元首相の様子が明らかになった。

 キャロル・サッチャー(Carol Thatcher)さんによると、症状が最も悪い日のサッチャー元首相は、文章1文ほどの内容を話すことも困難な状態だという。しかし、時折、過去の輝きを取り戻すことがあり、特に首相だったころの話をするときには顕著だという。

 キャロルさんの新著『ガラス張りの金魚鉢での日々(A Swim-On Part In The Goldfish Bowl)』は、英日曜紙メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)での連載を書籍化した回想録。キャロルさんは、「母は、いつまでも年を取らず、永遠で、鋳鉄のように丈夫だと思っていた」とつづった。

「昔は、母に同じことを2度言うことはなかった。1度話すだけで、その驚異的な記憶力で母親は何でも覚えた。でも、少しずつ、母は同じ質問をくり返しするようになった。しかも、何度も質問していることに気づかない」(『ガラス張りの金魚鉢での日々』)

 また、キャロルさんによると、サッチャー元首相は、夫デニス(Denis)さんが2003年に死去したことも頻繁に忘れたという。キャロルさんは、「何度もくり返し、父が死去したという事実を母に伝えなければならなかった」と記した。

「50年以上連れ添った夫はもう死んでしまったということをようやく母に納得させると、いつも決まって母は、気持ちを抑えてようとこらえる私を見つめて、悲しい顔で『まあ』と言う。そして、『わたし達はみんなその場に居合わせた?』とおだやかな声で私に尋ねる」(『ガラス張りの金魚鉢での日々』)

 ある日、サッチャー元首相の友人が、ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)元旧ソ連大統領について尋ねたことがある。「たちまち『鉄の女』に戻った母は、とても魅力的だった」と、キャロルさんは当時を思い返す。

 「鉄の女(Iron Lady)」と呼ばれたマーガレット・サッチャー英元首相は、英国初にして現在まで唯一の女性首相。1979年から1990年にかけて、保守党(Conservative Party)党首として政権を率いた。
 
 現在は83歳。軽い脳卒中を数度経験した後、2002年に主治医の勧めで公的な場でのスピーチを止めている。(c)AFP