【6月2日 AFP】経済協力開発機構(Organisation for Economic Cooperation and DevelopmentOECD)は5月30日、サイバー犯罪に関する報告書を発表し、電子メールやインターネットを閲覧するだけでも、不正なソフトウエアやハッカーによってシステムや経済活動が妨害される可能性があると警告した。

「Malicious software (malware): a security threat to the Internet economy(悪意あるソフトウエア[マルウエア]:インターネット経済へのセキュリティ脅威)」と題された報告書では、コンピューターウイルスと後手に回っている対策との攻防に言及。データの窃盗、政府や企業のコンピューターシステムへの侵入などのサイバー犯罪が「インターネット経済の深刻な脅威になりつつある」とした上で、こうした世界的な脅威に対する一致団結した対策ができていないと指摘する。

 報告書によれば、「世界中に広がる数百万ドル規模の犯罪社会の中で一時的な『手柄』を挙げるものにすぎなかったマルウエアは、過去20年間で進化を遂げた。サイバー犯罪者の資金力も増し、開発に力を注げるようになった」という。

 最近5年間で、システム攻撃、情報・資金・個人情報の窃盗といった犯罪は急増した。犯罪グループはゾンビ(zomby)、ワーム(worm)、ボットネット(botnet)、トロイの木馬(Trojan horse)、マネー・ミュール(money mule)といった仲介ソフトウエアやシステムを用いて、システムの破壊や個人情報の侵害、組織的攻撃の仲間集め、「身代金」目当てのデータ窃盗などを行っているといわれている。

 報告書は、「国家もこうした技術を保持し得る」との表現で、一部の国家政府がこうした技術を利用している可能性があるとも指摘している。

 OECDは、あらゆる形態のハッキング技術が犯罪者にとって有効性の高い武器となりつつあるとして、マルウエアの急速な発展に対して「国際的な協力関係が不可欠」だと強調している。(c)AFP/Hugh Dent