【5月14日 AFP】南アフリカでは、アパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃されて14年たった現在も、白人と黒人間の経済格差が縮まる気配はない。
 
 30業種の組合「UASA」が前週行った調査では、白人の平均収入は黒人の4.5倍、カラード(混血)の4倍であることがわかった。

■一朝一夕には解消できない「教育格差」

 調査書は、経済力の最大の決定要因は「教育」であると結論付けているが、アパルトヘイト時代の人種間の教育格差はそう簡単に解消されるものではないとの指摘がある。「黒人は、アパルトヘイトが撤廃された翌日には白人専用ビーチに入ることができたが、教育はそういうわけにはいかない」と、調査に参加したあるエコノミストは言う。

 南ア人種関係研究所(South African Institute for Race Relations)によると、アパルトヘイト時代、白人はほぼ国際レベルの教育が受けられる学校や大学への入学資格があったのに対し、黒人は「教育を受けさせるほどの価値はない」とみなされていた。

 政府は、そうした14年間の教育格差を埋めようと、黒人が多く通う学校への助成金を増やしたり、アファーマティブ・アクション(黒人の入学を優遇する措置)をとるなどの措置を講じている。

 黒人の進学率が低い原因は、タウンシップ(旧黒人居住区)の教師の資質の低下に加え、社会問題がその背景にあるという。また、親の進学の有無が子どもの進学にも影響を与えるという海外の調査もある。親が大卒だと、子どもも大学に進学する傾向が高いというのだ。

 ステレンボッシュ大学(Stellenbosch University)のエコノミスト、Servaas Van der Berg氏は、教育のほかに、人口の分布や統計的な平均年齢にも目を向ける必要があると主張する。白人の多くが給料水準の高い都市部に住み、平均年齢も黒人より高い。平均年齢が高い分、収入も多いと同氏は指摘する。

■黒人への入学優遇措置でも進展なし

 ルロフ・バーガー(Rulof Burger)氏とレイチェル・ジャフタ(Rachel Jafta)氏が2006年に著した『Returns to Race: Labour Market Discrimination in Post-Apartheid South Africa(人種への回帰:アパルトヘイト後の南アにおける労働市場の差別)』も、経済格差が「人種差別」によるものではなく「教育」によるものだと論じている。 

 両氏はアファーマティブ・アクションの効果について、「技能職では人種間格差がなくなりつつあるが、その他では目立った進展はない」と分析している。(c)AFP/Adam Plowright