【4月24日 AFP】東アジアでよく見られる遺伝的変異は、スポーツ競技で事実上使用が禁じられているホルモン、テストステロンの検出を妨げることがある。スウェーデンの研究チームが医学誌Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism(臨床内分泌学と代謝)に発表した。

 逆に、同じ遺伝子の現れ方がわずかに違うだけで、間違って陽性と判断される危険性もあるという。

 一般的なテストステロン検査は、尿に含まれる2つの化学物質、テストステロン・グルクロニド(TG)とエピテストステロン・グルクロニド(EG)の比率を測定することで行われる。TGは体内で作られるテストステロンの副産物で、EGはテストステロンが血中に注射されても常に残る物質。国際五輪委員会(International Olympic CommitteeIOC)によると、この比率が4対1を超えるとドーピングの疑いがあると判断される。

 ところが、「UGT2B17」として知られる遺伝子の保有数によって、この検査結果は20倍もの差が出る可能性がある。ドーピングを隠すこともあれば、間違って陽性と判断されることもある。

 ストックホルム(Stockholm)のカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)のJenny Jakobsson氏率いる研究チームは、男性被験者55人に対し、事実上、すべてのスポーツ団体によって禁止されている薬物、テストステロンエナント酸エステル500ミリグラムを投与した。被験者は「UGT2B17」の保有数(1、2、なし)によって3つのグループに分けられた。

 その結果、「UGT2B17」を保有していない被験者の40%以上が薬物投与後15日間、テストステロンの値が許容範囲内だったのに対し、その他2つのグループの検査結果は100%陽性だった。

 Jakobsson氏はテストステロンを対象としたドーピング検査を効果的に行うためには、遺伝子を考慮する必要があると指摘している。(c)AFP