【8月16日 AFP】ドイツ西部の工業都市デュイスブルク(Duisburg)で15日未明、イタリア人6人の射殺体が発見された事件で、イタリア警察は16日、事件との関連が疑われるマフィアグループNdranghetaが拠点とするイタリア南部カラブリア(Calabria)州サン・ルカ(San Luca)村に厳戒警備を敷いた。

 イタリアのANSA通信によると、連鎖事件を未然に防ぐため、サン・ルカ一帯の道路は封鎖された。同村では1991年のバレンタイン・デーにNdranghetaによる内部抗争が勃発して以来、現在に至っているという。カラブリア州の主要都市レッジョ・ディ・カラブリア(Reggio di Calabria)では近日開かれる「反マフィアサミット」を目前にしていた。

■シチリアのマフィアより凶暴

 Ndranghetaは恐喝や麻薬取引、武器密輸だけでなく、放射性廃棄物や有害廃棄物の不法投与にも関与し、シチリアのマフィアグループと関連があるとされているが、より閉鎖的で暴力的だといわれている。

 シチリアン・マフィアが階層に基づいた組織であることに対し、Ndranghetaは他者への著しい不信感から独立組織体制をとっている。近年、おとり捜査が警察のマフィア取り締まりで功を奏しているが、同組織は外部者の侵入を徹底的に拒んでいる。

 一方、イタリア警察の捜査官2人は同日、事件捜査のためドイツ入りした。

■被害は全員、同郷出身

前日、ドイツで殺害されたのは16歳から38歳までの6人で、うち2人は兄弟だった。全員がカラブリア出身で、1人を除いた5人全員が知り合い同士だった。被害者のうち3人はデュイスブルク在住、1人は近郊のミュールハイム(Muelheim)在住で、2人は最近ドイツに来たばかりだったという。

 6人の射殺体は、デュイスブルクの鉄道駅付近に駐車していた車両2台から発見された。レストランで射殺された18歳の被害者の誕生日を祝っていたところを襲撃されたとみられ、現場写真には弾痕だらけのオペル(Opel)車のフロントガラスが写っている。

 ドイツ捜査当局は、事件当日に銃声を耳にして警察に通報した女性目撃者の情報から、銃撃犯は2人とみている。現場となったピザ店前をとらえた監視カメラ映像を検証した結果、Ndranghetaの内部で対立する派閥間抗争の可能性が高いとしながらも、あらゆる要素を視野に入れた捜査を行うとしている。

 イタリアのジュリアーノ・アマート(Giuliano Amato)内相も前日、「被害者の1人は、最近、イタリアのカラブリア州サン・ルカで起こった事件に関わった人物ではないか」と述べ、被害者らはマフィア抗争に巻き込まれたものであるとの見方を示している。また「第3の事件」の発生を防ぐため、カラブリア州での警備体勢を強化したと述べた。

 イタリア警察は「カラブリア州のマフィアが、ドイツ内で勢力を強めているのは事実だが、これまでは目立った動きはなかった」とし、イタリアのマフィアが外国で抗争事件を起こすのは極めてまれだとの認識を示した。

 一方、6月に発表されたイタリア内務省の報告書では「Ndranghetaが近年、活動をグローバル化させている」と警告している。(c)AFP