【7月11日 AFP】イラン司法当局は10日、ガズビン州(Qazvin province)のタケスタン(Takestan)に近いAghche Kandの村で、不倫行為で有罪判決を受けた男性の石打刑が執行されたと発表した。

 2002年に石打刑の執行停止命令が出されて以来、イラン当局が刑の執行を公式に認めるのは5年ぶり。各国から非難の声が上がっている。

 死刑になったのはJafar Kianiという男性。人権活動家によると、Kiani被告は11年前、婚姻関係にありながら別の女性と同居していて逮捕された。相手の女性のMokarrameh Ebrahimi被告も別の婚姻関係にあったため同時に逮捕され、やはり石打刑の判決を受けている。現在2人の子どもとガズビン州の刑務所に収容されているが、刑は執行されていないと報道官は表明した。

 6月にはこの2人とみられる被告の石打刑の執行が差し止められたと報じられていた。

■石打刑の中止を要請

 ルイーズ・アルブール(Louise Arbour)国連人権高等弁務官は、執行停止命令が出されているにもかかわらず石打刑が執行されたことを強く非難し、この問題をイラン政府が直視し、Ebrahimi被告を含めたすべての死刑囚に対する石打刑の執行を取りやめるよう求めた。

 また、ノルウェー政府はイラン大使を召喚し、「野蛮な」石打刑に反対するよう要請した。

 イスラム法では婚姻外性交渉の罪に対する刑として石打が認められているが、2002年、欧州連合(EU)はイランとの通商協定締結に際し人権問題の改善を条件に挙げ、司法府代表のマハムード・ハシェミ・シャハルディ(Mahmoud Hashemi Shahrudi)師が執行停止命令を出した。

■今後も裁判官権限で執行可能、イラン当局

 最高裁にはこの執行停止命令に基づき石打刑を差し止める義務があるが、今回、司法府報道官は「有罪は確定していたので執行された」と述べ、最高裁の許可があったことをほのめかした。さらに「石打刑についての考え方は変化していない。司法府代表は執行停止を命令することもできるが、裁判官には独立の権限があり刑は執行されることもある」と強調した。

 イランの司法当局は2002年の執行停止命令以降、石打刑は行われていないという立場を取ってきたが、人権団体や報道機関は、実際には刑が執行されていたとしばしば主張してきた。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)によると、2006年には177人、今年もこれまでに110人が石打刑で処刑されているという。

 石打刑では男性の場合は腰まで、女性の場合は首まで被告の体を地中に埋め、石を投げつける。(c)AFP