【6月27日 AFP】石油輸出国機構(Organization of Petroleum Exporting CountriesOPEC)2位、世界4位の産油量を誇るイラン政府は26日、これまで政府車両に限られていた燃料配給制度の対象を一般車とタクシーにも拡大すると発表した。膨大なガソリン助成金の削減がねらい。これを受け抗議活動は全国的な広がりを見せ、27日には暴徒化した若者たちがガソリンスタンドに放火したり、ガソリンスタンドに長蛇の車列ができるなどの事態が発生している。

 同国が燃料配給計画の第1段階を開始したのは2週間前。それに先立つ5月には、ガソリン小売価格をリットル当たり約10セント(25%)引き上げていた。

 政府によると、配給制度は4か月続く予定で、さらに2か月延長される可能性もあるという。政府の推計によると、配給制度を導入しなければ、燃料輸入額は年間95億ドル(約1兆2000億円)に達する見通し。イランの自動車保有台数は700万台以上。

 26日に発表された計画では、向こう4か月のガソリン使用割当量は、ガソリン車が400リットル、液化天然ガスとガソリンの併用車が120リットル。月間使用量が割当量を下回った場合は、翌月に持ち越すことが可能。

 27日午前0時から配給制が開始されるとの突然の発表を受け、ガソリンスタンドに自動車で詰めかけた人々が警察当局と衝突。国営ラジオは「ガソリンスタンド数か所が暴徒による被害を受けた」と伝えた。

 首都テヘラン(Tehran)北西部の居住地区Pounakでは26日遅く、抗議者たちが「マフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領に死を」と叫びながら投石、ガソリンスタンドに停車していた車や給油ポンプに放火した。

 最近、一部の経済グループの間では大統領の政策がインフレを促進し貧困層を圧迫しているとして批判が高まっていたものの、2005年の同大統領就任以来、国民がこのように激しい怒りをあらわにしたのは初めて。

 武装した警官隊が警備に当たる中、テヘランを始めとする国内各地のガソリンスタンドには数キロにわたる長蛇の車列ができた。バケツを手に燃料を求める人々の姿も見られた。

 同大統領は、地方での事業に多額の資金を投入したり約束したりしたことで、すでに高度のインフレを引き起こしているとして改革派のマスコミから批判を受けている。今月、50人以上のエコノミストが同大統領の経済政策が社会に与えるについて警告する公開書簡を大統領に送付している。

 一方、富の再分配を政治要綱に掲げる同大統領は、インフレはコントロールされており、政府は貧困撲滅のためにできるすべてのことをしていると反論した。

 イラク中央銀行の予想によると、2008年3月までの1年間のインフレ率は17%と、前年比3.5ポイントの上昇となる見通し。ただ、一部のエコノミストの間では、インフレ率はさらに高まるとの見方もある。(c)AFP/Pierre Celerier