【アンカラ/トルコ 20日 AFP】世俗国家のトルコでは、公の場でのヘッドスカーフの使用を禁止しているが、次期ファーストレディーがヘッドスカーフを着用することが予想されており、世俗主義勢力が危機感を募らせている。

 5月の大統領選挙では、レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相が立候補した場合、当選確実とみられている。その場合、人前でベールを外したことのない夫人が大統領府の住人になることになる。

 エミネ夫人は、エルドアン首相に28年間連れ添ってきた。同首相率いる公正発展党(Justice and Development Party、AKP)首脳部の夫人たち同様、幼少時からベールを着用してきた。

 現在全550議席のうち353議席を握るAKPの前身は、2001年に解党命令を受けたイスラム主義の政党。同首相は「保守的な民主主義」をうたっているものの、世俗主義勢力は、AKPは密かにイスラム思想を堅持しているとみて、同首相の大統領就任を警戒している。

 エミネ夫人がヘッドスカーフを着用する点については世俗勢力だけでなくAKP内でも「ヘッドスカーフを着用する妻を持つ候補者は、政教分離の原則にもとづいた国のトップになれるのか?」という激しい議論が展開されている。同首相はヘッドスカーフの使用禁止令廃止の望みを隠さないが、軍部を含めた世俗主義勢力の激しい反発を前に実現できていない。

 世俗主義勢力は、同首相が娘たちを「大学でヘッドスカーフを着用できるため」との理由で米国に留学させたという事実も挙げ、エミネ夫人を現体制の脅威となるイスラム原理主義の象徴とみている。世俗主義を掲げる新聞各紙は、エミネ夫人と、ヘッドスカーフをしていないヨルダンのラニア王妃(Queen Rania)やシリアのアスマ・アサド(Asma al-Assad)大統領夫人の写真を対置させ、問題意識を提起する戦略に出ている。

 ちなみに、ヘッドスカーフの着用全面禁止を訴えてきたアフメト・ネジデット・セゼル(Ahmet Necdet Sezer)現大統領がエミネ夫人やAKP首脳部の夫人を大統領府に招待したことは一度もないという。

 写真は、イスタンブールで開催された「世界ビジネスウーマン・サミット」に出席したアスマ夫人(左)とエミネ夫人(2006年4月27日撮影)。(c)AFP/BULENT KILIC