【マイアミ/米国 20日 AFP】マイアミ(Miami)の病院で、21週6日の早産で生まれた世界最少の超未熟児が、新生児集中治療室で順調に成育、誕生から約4か月を経た21日、退院し、両親とともに自宅に移った。

 治療にあたる医師たちから「奇跡の子(miracle baby)」と呼ばれたアミリア・テイラー(Amillia Taylor)ちゃんを抱きマイアミのバプティスト小児病院を退院した母親のソーニャ・テイラー(Sonja Taylor)さんは、「今朝早く、医師から退院できると知らされたのです」と手放しで喜びを語る。報道陣から「自宅には人工呼吸器の用意はあるのか」と尋ねられると、父親のエディ・テイラー(Eddie Taylor)さんは笑顔で「準備万端」と答えた。

 2006年10月24日の誕生時、アミリアちゃんは、体重280グラム、身長はボールペンよりやや長い9.5インチ(約24センチメートル)しかなく、記録上、世界史上4番目に小さい体の新生児だった。

 今週初めソーニャさんは、「いまも4ポンド(約1.8キロ)しかないけれど、私には、ずいぶんふっくらしてきたように見えます」と誇らしげに語った。また、「ここまで成長したことが、今も信じられません。大きな驚きです」とも語っている。

 アイオワ大学(University of Iowa)の未熟児に関する記録によれば、これまでに23週間未満で生まれた新生児の生存例はないという。

 「本当に奇跡の子だと思います」と語るのはマイアミの病院でアミリアちゃんの治療を担当した新生児生理学者のウィリアム・スモーリング(William Smalling)医師。

人工授精で生を受けたアミリアちゃんは, 早産防止処置が失敗し急きょ帝王切開に切り替えられ生まれた。 アミリアちゃんは最初から呼吸器なしで息をし、何度か泣こうとさえしたという。

 誕生時、頭部裂傷があったアミリアちゃんだが傷はまもなく消えた。スモーリング医師は、「1ヶ月にわたるアミリアちゃんの治療は海図を持たず航海をするような経験でした。こんな小さな新生児は、はたして血圧がどのくらいあれば正常なのかも、最初はわからなかったのです」と述懐している。

 アミリアちゃんの治療について、同医師は「地図のない航海」のようだったと語る。「こんなに小さな新生児の『正常』な血圧値なんて、誰も知らないんだからね」

 また、米国小児科学会(American Association of Pediatrics)が、一般的に23週以下で400グラム未満の新生児には生存能力がないとの見解を発表していることについて、スモーリング医師は「アミリアの例を考慮して、未熟児の生存能力基準を再度見直す必要がある」との考えを示した。「時を経て、医療技術はアミリアのような超未熟児を救えるほどに目覚ましい発展を遂げた。10年前には生存不可能だった未熟児も、今なら我々の手で救うことができる」 と述べる。

 しかし、一方で、同僚のPaul Fassbach医師は今回のケースはあくまで例外と強調。「超未熟児を助ける技術を確立したのようなに、理解してもらっては困る」と釘を刺した。

 父親のエディさんはこう述べている。「すべては神様の御心だと思っています。思い煩うことなく、妻のベッドに付き添うことだけを心がけていました」。

 写真は19日、マイアミのバプティスト小児病院でアミリアちゃんを抱いて記念撮影に応じるソーニャさん(前列中央)と、エディさん(同右)。(c)AFP/BAPTIST CHILDRENS HOSPITAL

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