ケニア商業施設襲撃、追い詰められたアルシャバーブが海外で脅威に
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【9月23日 AFP】ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)の高級ショッピングモール襲撃事件で犯行声明を出した隣国ソマリアのイスラム過激派組織「アルシャバーブ(Shebab)」は近年、拠点であるソマリア国内では勢力を失いつつあった。しかし今回、多数の死者を出す事件を起こしたことで、国際テロ組織アルカイダ(Al Qaeda)系の同組織の脅威が改めて示されたと専門家は警告する。
アルシャバーブは、アフリカ連合(AU)部隊との戦闘や内部抗争によりソマリア国内の主要拠点を相次いで失っているにもかかわらず、今年に入って活動を活発化させており、6月にはソマリアの首都モガディシオ(Mogadishu)にある国連施設に自爆攻撃を行っている。専門家は、21日の高級ショッピングモール「ウエストゲート(Westgate)」襲撃のような大規模かつ暴力的な攻撃について、アルシャバーブが劣勢にあるとの印象を覆し攻勢につなげたいとの思惑が垣間見えると指摘する。
■起死回生狙った?
「皮肉なことに弱体化したアルシャバーブは海外にとって、強靱なアルシャバーブよりも大きな脅威となっている」と、米ノースカロライナ(North Calorina)州にあるデービッドソン大学(Davidson College)のケン・メンクハウス(Ken Menkhaus)教授は21日の事件後に発表した記事で述べた。組織が弱体化・断片化すると、海外でテロを起こそうと考える傾向が強まるのだという。
一方、米シンクタンク「大西洋評議会(アトランティック・カウンシル、Atlantic Council)」のJ・ピーター・ファム(J. Peter Pham)アフリカセンター長は、「主導権と方向性をめぐってアルシャバーブ内部で抗争が続いている」と指摘する。
アルシャバーブ内部では、米政府が懸賞金700万ドル(約7億円)をかけて身柄を追っている最高指導者アハマド・ゴダネ(Ahmed Godane)容疑者の指導力をめぐって、一部メンバーがアルカイダの現最高指導者アイマン・ザワヒリ(Ayman al-Zawahiri)容疑者に苦情を申し立てる事態が発生。ゴダネ容疑者は造反したメンバーを粛清し、現在、組織の専制的支配を強めようとしている。
今後注目すべき問題は、ゴダネ容疑者が対抗勢力を組織中枢部から遠ざけ、ソマリアの反政府組織としての色を薄めてテロ組織化を進めることによって、アルシャバーブが周辺地域を脅かす存在となるかどうかだとファム氏は言う。
■観光業への打撃も計算か
ソマリア国内でのアルシャバーブは近年、アフリカ連合ソマリア・ミッション(African Union Mission in Somalia、AMISOM)のほか隣国のケニアやエチオピアの軍との交戦が続き、弱体化の一途をたどっていた。拠点としていた首都モガディシオからも撤退し、その後は各地でAMISOMに敗北を喫し続けている。
メンクハウス教授は、21日のショッピングモール襲撃を「組織弱体化を示す新たな兆候だ。リスクの高い捨て身の攻撃は、組織の巻き返しを狙ったギャンブルだった」と分析した。
ケニア陸軍は約2年前、アルシャバーブ掃討を掲げてソマリア南部に越境攻撃を行い、拠点だったキスマヨ(Kismayo)を掌握した。これを受けてアルシャバーブはケニアに対する報復を繰り返し警告していたが、21日のウエストゲート襲撃までは比較的小規模の攻撃にとどまっていた。
一方、アルシャバーブに関する著書のあるノルウェーの学者、スティグ・ヤーレ・ハンセン(Stig Jarle Hansen)氏は、21日の事件や6月の国連施設を標的にした事件には2008年にインド・ムンバイ(Mumbai)で起きた同時襲撃事件と多くの共通点があると指摘。「目立つ攻撃を仕掛けることで、観光業に打撃を与えられる。ケニアにとっては大きな痛手であり、この点は(アルシャバーブの)計算に入っていたはずだ。欧米諸国は渡航自粛の警告を出すかもしれない。経済危機をうまく乗り越えてきたケニアも、今回の事件では影響を避けられないだろう」と述べている。(c)AFP/Helen VESPERINI