【8月28日 AFP】爆破事件や襲撃が頻発しているイラクの首都バグダッド(Baghdad)で28日、シーア派教徒が多い地区を中心に10か所以上で爆弾が同時に爆発し、少なくとも49人が死亡、150人以上が負傷した。通勤時間帯を狙った爆発の多くは自動車爆弾によるものだったが、2か所では自爆攻撃も起きた。

 イラクでは今年に入ってから、シーア派主導の政府と治安部隊から不当な扱いを受けているとする少数派のスンニ派による抗議デモが展開されるのと並行して、2008年以来最悪の治安状況に陥っており、これまでに3700人以上が死亡している。バグダッド周辺では、治安部隊による武装勢力の一掃作戦が大々的に行われているが、そうした中でも襲撃が相次いでいることから、政府は暴力の根本にある原因の解決に取り組んでいないと批判を浴びている。

 28日のバグダッドでは、少なくとも8人が死亡、22人が負傷した南東部ジスル・ディヤラ(Jisr al-Diyala)地区で起きた2か所での同時爆発を筆頭に、3人が死亡したジャディダ(Jadidah)地区、同じく4人が死亡した北部のシャアブ(Al-Shaab)地区、さらにカダミヤ(Kadhimiyah)地区やサドルシティー(Sadr City)といったシーア派居住地区が一斉に標的とされた。

 シャアブ地区に住む18歳のマルワさんは「私たちは貧しいのに持っていたものもすべて無くなり、家は崩れてしまった。政治家は地位を争ってばかりで、私たちの面倒などみてくれない。爆発のせいで皆がホームレスになるのに。誰が補償してくれるの」と怒りをぶつけた。

 直ちに犯行声明を発表したグループはないが、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)と関係のあるスンニ派武装勢力が「背教者」とみなすシーア派を狙う計画的な攻撃は頻繁に起きている。

 今月6日には、少なくとも8件の自動車爆弾の爆発と数件の道路脇に仕掛けられていた爆弾の爆発が起き、計31人が死亡。10日にはバグダッドで連続爆発と銃による襲撃事件があり、計47人が死亡した。さらにその5日後にもバグダッドで9件の爆発があり、24人が死亡している。

 各国の外交筋や専門家らはイラク政府に対し、武装勢力に戦闘員を勧誘し攻撃させる余地を与えているのはスンニ派の不満だとして、そうした不満に広範に対処するよう呼び掛けているが、ヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相は治安部隊による対武装勢力作戦を断固進めると宣言している。最近では、治安部隊が武装勢力の訓練キャンプと爆弾製造所を壊滅し、数十人を殺害、戦闘員数百人を逮捕したと発表している。

 しかし、イラク政府は治安問題への対処だけでなく、電気や清潔な飲料水の供給といったインフラの提供もできていない。汚職もまん延している上、さらに政争によって政権はまひ状態で、この数年間、重要法案が可決した例はほぼ皆無だ。(c)AFP/Al-Nasir Bellah