【8月10日 AFP】レバノンの首都ベイルート(Beirut)で9日午前3時(日本時間同9時)ごろ、トルコ航空(Turkish Airlines)のパイロット2人が武装集団に誘拐された。シリアで失踪したレバノン人巡礼者の解放を要求する意図があるとみられる。

 レバノンのマルワン・シャルベル(Marwan Charbel)内相は、武装集団がトルコ航空のパイロットと他の乗務員を乗せて空港から市内のホテルに向かっていたバスから機長と副操縦士の2人を降ろして連れ去ったと述べた。

 レバノン筋によると武装した4人がバスを待ち伏せして犯行に及んだ。バスに同乗していたパイロット以外の乗務員7人は同日中に空路帰国する予定だと発表された。事件が起きたのは空港のすぐ外、イスラム教シーア派原理主義組織のヒズボラ(Hezbollah)とアマル(Amal)の支配地域に隣接する場所だという。

■シリアで失踪したレバノン人9人の解放を要求

 これまで知られていないZuwwar Imam Ali al-Ridaと名乗るグループが犯行声明を出し、シリアで昨年失踪したレバノン人巡礼者9人を解放させるために実行したと主張した。同グループは、9人の解放にはトルコ政府が直接の責任を負っているとしている。

 これに対しトルコ外務省の報道官は、シリア国内でレバノンの巡礼者が行方不明になったこととトルコ政府は無関係で、この件では人道的観点からトルコ政府に可能な対応は全て行っていると述べた。

 2012年5月、シーア派のイマーム、アリー・アッリダー(Ali al-Rida)の寺院などイラン国内の聖地を訪れた後にシリアの北部アレッポ(Aleppo)に入ったシーア派の巡礼者9人が失踪する事件が起きた。失踪した9人の家族らは事件後、トルコ政府に9人の解放への協力を求めて、ベイルートにあるトルコ航空の事務所前でデモを繰り返してきた。

 レバノン政府筋によると、9人のレバノン人を誘拐した勢力は今回の誘拐事件が発生する前に、シリア政府によって投獄されている女性受刑者134人の釈放と引き換えに9人を解放するという取引に失敗していたという。(c)AFP/Khalil Fleyhan