【6月8日 AFP】国連(UN)は7日、シリア内戦による難民などを救済するため、過去最高額となる52億ドル(約5070億円)の支援を訴えた。

 国連は、シリア国外に逃れた難民の救済に38億ドル(約3700億円)、国内での支援活動に14億ドル(約1365億円)が必要と発表した。

 アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)国連難民高等弁務官は記者団に、「戦闘が止まなければ、国際社会が対応する用意ができていない事態が、中東で勃発する危険性がある」と語った。

 バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領に対する抗議運動の弾圧がきっかけで内戦が始まった2011年3月以降、シリアでは9万4000人が死亡し、160万人の難民が生まれている。今年末までに、難民の数は少なくとも345万人に達すると国連は予測している。国内では今年中に計680万人に対する支援が必要となる見込みで、その大半は戦闘のために家を追われた人々だ。

 一方、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ(Hezbollah)の支援を受け国境近くの要衝クサイル(Qusayr)を5日に奪還したシリア政府軍は7日、クサイル北の反体制勢力最後の孤立地帯の一掃を試みている。米ニューヨーク(New York)の国連本部では同日、人道支援のためのクサイルへのアクセス許可をシリアに求める安保理声明に、同国の同盟国ロシアが同意した。

 またシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によると、政府軍は同日、ゴラン高原(Golan Heights)の対イスラエル非武装地帯での反体制勢力に対する勝利に乗じて、北部アレッポ(Aleppo)の戦場に増援部隊を送った。

 ゴラン高原では6日、反体制派がクネイトラ(Quneitra)検問所を一時的に掌握し、政府軍が奪還したが、これを受けてオーストリアは、同地域で1974年からイスラエルとシリアの停戦を監視している国連兵力引き離し監視隊(UN Disengagement Observer ForceUNDOF)から撤退すると発表。国連関係者によると、この戦闘でUNDOFに所属するフィリピンとインドの平和維持要員2人が負傷した。フィリピンも341人の部隊の撤退を検討中と発表している。

 国連では6日夜、UNDOFの3分の1以上を構成する377人のオーストリア兵が撤退した後の、補充部隊の調達先を決める緊急協議が行われた。ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、7日に開かれるUNDOF問題に関する安保理会議に先立ち、ロシアの平和維持部隊がオーストリア部隊の代わりを務めると提案した。(c)AFP